表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/424

33話 修練の塔 8

ーーーー修練の塔、最上階の小部屋。

 僕は、床に手をつけてうなだれていた。まさか、こんなことになるなんて。

 Lv1。

 さっきもガンダムッポイノが説明していた。レベルドレインすると、経験値を溜めるまでは元に戻れないって。

 代わりに、低レベルの間は、ジョブレベルやスキルレベルが上がりやすいって。

 メリットは、確かにあるよ、うん。

 でも、でもさ。ひどすぎない?

 四日とはいえ、僕、何度もじいちゃんに死にかけの状態を経験させられながら、上げたレベルだよ?

 これでも必死に頑張ったんだよ?

 それが一瞬でリセット。

 あぁ、本当に泣きそう。



「テルア? おーい、テルアやーい」

 諸悪の根源(じいちゃん)が、僕に話しかけてくるけど、会話する気になれない。脱力感と無気力感が半端じゃない。

 でも、いつまでもこうしていても始まらない。

 僕は、のろのろと顔を上げて、一言呟いた。

「帰る。出口どこ」


 今更、塔内に戻って探索なんてとてもできやしない。気持ち的にも、ステ的にも。


「あの水晶に触って外に出たいと念じれば、塔の外へと転移されるよ。その、無理かもしれないけど、元気だして、ね。あ、そうだ! これあげるよ」


 ガンダムッポイノが、僕に何かを差し出す。白い布で包まれたそれは、僕の片手で持てるくらいの大きさだった。

 布の中身を確認してみると、表面が滑らかになっている茶色い小石だった。

 触ってみると、つるつるとした感触が指に伝わってくる。

「何、これ?」


「それは、修練の塔の外壁の一部だよ。塔の外壁全てが、この塔への入り口になってるから、それさえあれば、いつでも、どこにいてもこの塔に来られるんだ。君が少しでも元のレベルに戻りやすいよう、この塔を活用してくれたら嬉しいな」

「・・・・・・ありがとう、ガンダムッポイノ」

 僕は礼を述べてから、ガンダムッポイノが示した赤い水晶に触った。

「出るよ、チャップ」

 所在なさげにしていたチャップに声を掛けると、嬉しそうに僕の方へとやって来る。

「ハイ、シショウ!」

「テ、テルア。儂は?」

 僕はじっとじいちゃんを見つめる。じいちゃんも僕を見つめる。じいちゃんは僕に何か言われることを期待しているようだ。

 なら、今の気持ちを端的に伝えよう。


「じいちゃん。しばらくじいちゃんの顔、見たくない」

「ぐはあっ!」

 僕は、呆然と立ち尽くすじいちゃんを置いて、水晶に念じて塔の外へと出た。

 あぁ、なんでこうなったんだろう。

 


 塔の外へと転移すると、僕以外にマサヤとユミアちゃんがいた。

 二人とも落ち込んでるようだ。

 何かあったのかな?


「どうしたの、二人とも。ため息ついちゃって」

「テルア。お前も出てきたんだな。後ろにいんのは?」

 僕に気づいたマサヤは、僕の側にいるチャップにも当然気づく。

 僕は簡単にチャップを紹介した。


「塔で仲間になったチャップ。ちなみに悪魔兵(デーモン・ソルジャー)兵隊長(リーダー)。今は、レベル1だけどね。チャップ。こっちはマサヤとユミアちゃん。マサヤは僕の友達で、ユミアちゃんはマサヤの妹」


「ハジメマシテ。チャップデス。コノタビシショウニデシイリサセテモライマシタ。イゴ、オミシリオキヲ」


 簡単な紹介を済ませると、マサヤとユミアちゃんがチャップに頭を下げた。

「どうも、丁寧な挨拶ありがとな。俺はマサヤでこっちはユミア。気軽に呼び捨てしてくれていいから」

「ワカリマシタ」

 これで、ひとまず最初にやるべきことは済ませたと思う。後は、シヴァたちが出てきてないから、ちょっと待たないと。

 さすがに仲間を放って帰るなんて真似はしないよ、僕は。

 待つ間は、やることもそんなにないので、マサヤたちに先程ついていたため息の理由を聞いた。すると。


「それがなぁ。3Fまで言ったんだけど、魔物たちに取り囲まれて、死んじまってな。気づいたら塔の外へと飛ばされてたんだよ。おまけに、負けたからか所持金が半分に減ってたのと、ポーションが幾つかなくなってな。まぁ、レベルは少し上がったんだけど。テルアは大丈夫だったか?」

「僕の場合、逆かな、マサヤたちと。所持金と持ち物については無事だけど、レベルが1になった」



 僕は誰かに不満をぶちまけたかったので、思いきりマサヤにぶちまけた。

 すると、マサヤが「はぁ?」と気の抜けた声を返す。

 僕は唇を尖らせながら、塔内であったことを手短にしゃべった。


「つまり、なんか紆余曲折があったものの、そっちのチャップのレベルドレインにお前も巻き込まれて、レベルが1になっちまった、と。そりゃ、また、なんというか、えーっと」

「いいよ、慰めてくれなくて。不満聞いてくれただけでも、だいぶ気分がましになったから」

 冷静に考えると、起きたことを嘆くよりも、とりあえず上げたいスキルを上げやすくなったって考える方が建設的だよね。

 気持ちを吐き出したら、切り換えていかないと。

 とりあえず、僕が今上げたいのは魔物調教のスキルだね。



 スキルレベルを上げて、もふもふの魔物を仲間にして、もふもふ天国(ハーレム)を築いて、エンジョイゲームライフをするんだ〜。楽しみだなぁ。

 あ、でも、レベル1だとあんまり強い魔物のいる迷宮や場所には出入りできないかな。

 うーん、さっきはレベルばかり気を取られてたけど、今の僕のステータスの確認しとこ。


「ステータス」

 僕が唱えると、プレートが光って今の僕のステータスを見せてくれる。

 僕の現在のステータスはこんな感じだった。


名前 :テルア・カイシ

メインジョブ:魔物使い(基本職、Lv8) サブジョブ:道化師(レア職、Lv5)

LV :1

HP :700

SP :440 

力  :94 + 15

敏捷 :92

体力 :120 + 6

知力 :86

魔力 :85

器用 :114

運  :415

かっこよさ: 20


スキル 剣術Lv 18 武器術Lv15 道化術Lv11 火魔法Lv16 水魔法Lv14 風魔法Lv18 地魔法Lv15 闇魔法Lv10 光魔法Lv19 幻惑魔法Lv13 唄魔法Lv1 魔物調教Lv40 気配察知Lv15 危機察知Lv21 急所察知Lv15 威圧Lv7 鋼糸Lv7 超音波Lv4 なめるLv1 タフネスLv10 不屈の闘志Lv10 解析Lv2 採取Lv6


称号 魔神の加護 魔物博士


装備品 飛竜の短剣 黒の冒険者の服(丈夫) 黒の手袋 丈夫な革靴


所持アイテム ぽーちょん×54 はい・ぽーちょん×32 えすぴーぽーちょん×26、はい・えすぴーぽーちょん×15、どくけし(にがい)×22 ポーション×11 ハイ・ポーション×6

薬草(良)×99、毒消し草(良)×99 銀のかけら×36 山珊瑚×15 山珊瑚のかけら×37 マタタビ×51  上薬草×99 特薬草×99 上毒消し草×99 マヒロン草×99

闇蛇の鱗×22 闇蛇の牙×34 殺人蜂の針×16 殺人蜂の羽×31 巨大百足の足×99 幻惑蝶の羽×10 麻痺蛾の麟粉×10 天津虫の繭×3 海賊ワニの革×60 鉄甲羅亀の甲羅(完全)×30 風虎の尾×1 ナイフ×20 アイアンソード×16 アイアンナックル×4 銀の腕輪×4 銅の腕輪×8 木の杖×12 木の弓×5 冒険者の服×2 ローブ×5 魔物大辞典(魔神のサイン入り) 魔法大図鑑(魔神のサイン入り) 



所持金 3,650,128ギル




 と、なってる。

 隣で、どれどれとか言って僕のステータスを覗いていたマサヤが、見た瞬間、固まった。気持ちはわからないでもないけど、勝手に人のステータス見るのはどうかと思うよ? 見られて困るものだし。

 

「テルアーーーーーっ、おま、お前、このステっ!」

「言葉になってないよ、マサヤ」

「なんで軒並みステが高いんだよ! いやそもそも、おかしい。レベル詐欺じゃねぇか、こんなん! しかもスキルも多いし、スキルレベルも高いし! お前の職業(ジョブ)がもはや何なのかパッと見、わかんなかったぞ!?」

「いや、でも。かなり弱体化してるよ、これ。少なくとも塔に入った時の方が高かったし」

「配信開始からたった二週間だろ!? それなのに、どうやったらレベル1でこんなステが出来上がるんだ! 重課金者に並ぶだろ、こんなの! いや、課金システムも確か最大限度額が設けられてるから、下手すりゃ重課金以上? 嘘だろ」

 マサヤは頭を抱えてしまった。


「確かにレベル1なのに妙にステ高いなぁ。あ」

 僕は一つ思い出したことがあり、それをマサヤに伝えた。

「そういえば、じいちゃんが言ってたんだけどさ。魔物使いって、魔物が仲間にできないと、かなり不遇な職業だけど、魔物を仲間にできたら、これほど簡単に強くなれる職業もないって言ってた。なんかね、魔物調教のスキルレベルを上げると、仲間になった魔物のステが魔物使いにも反映されるようになるんだって」

「いっ!?」

 つまり、魔物使いのレベルが低くとも、仲間の魔物のステが高いと、それが反映されるわけで。

「仲間魔物が強ければ強いほど、魔物使いも強くなる、だと!? お前、それ無限に強くなり放題じゃねぇか! ヤバイ、それは絶対にヤバイ。お前、今すぐ転職しろ! お前が魔物使いやってたら、確実に重課金プレイヤーに妬みそねみで狙われるぞ!」


「あ、でも仲間にできる魔物の上限はないけど、ステが反映される魔物の上限はあるんだよ。最大10体なんだって。しかも仲間にした順。これは変えられないんだって。あと、これはプレイヤーに限るんだけど、お助けキャラを仲間にして育成すると、育てたプレイヤーに無条件にお助けキャラのステが1割反映されるんだって。こっちは条件クリアしてキャラを仲間にすればいいだけだから、誰にでもチャンスあるし、仲間にするお助けキャラの上限もないんだって、じいちゃんが言ってた」


「へぇ。そうなのか。それならたくさんお助けキャラを仲間にして、お助けキャラを育成して強くなることもできるのか。・・・・・・待てよ? お前、今、プレイヤー限定って言ってたよな。それ、お前もお助けキャラ仲間にして育成できるってことなんじゃ・・・?」


「できるよ?」


「やっぱお前、最強じゃん! もうやだ、こいつやだ。自分がどれだけ規格外かわかってない!」

 がくり、と項垂れるマサヤ。

 でも、僕としては不満だらけのステなんだよ、これ。ステ知っちゃったマサヤには悪いけどさ。



「でも、みんなよりも弱いんだよ、今の僕。こんなんじゃ、みんながピンチの時、守れないじゃないか」

「みんなって、あの魔物たちのことか」

「当然。どんな強敵が現れても、みんなを守れてこその、(マスター)でしょ? そうじゃなきゃ(マスター)の資格なんてないじゃないか」



 仲間にした魔物は、どんな強敵でも僕が全力で守る。

 これが、僕の魔物使いとしての決して曲げられないポリシーだ。

 だから、僕は頑張って力をつけるんだよ。

 剣士なのか、魔法使いなのか、魔物使いなのかわからなくなっても。

 そんなのみんなを守れれば関係ない。


「お前、ほんっとその、魔物使いとしてのやり方は変わらねぇな。あいつらも、すげえ嬉しそうだぜ?」

「?」


 指差された方向へ首を巡らせると、そこには傷ついたシヴァたちがいた。

 僕は慌ててみんなにヒールを掛けるが、みんなは動かない。

 どうしたんだろ?

 そう思っていたら。

 シヴァが僕に襲いかかって・・・いや、のしかかってきた。

 ブラッドはのしかかられて倒れた僕の頭の横で、頬擦りをしてくる。

 ハイドは、僕が倒れたときに糸を吐き出して、糸のソファーをつくってくれた。

 ガチガチガチガチと、足を鳴らしている。興奮してるときの特徴だ。


「お前ら、テルアの仲間になれて本当に幸せだな」

 マサヤが満面の笑みを浮かべていたのが視界の端に映ったのだった。

 ちなみにある程度みんなとじゃれあった後で、チャップのステータスを解析でみてみた。






名前 :チャップ(悪魔兵兵隊長)

メインジョブ:軽業師(基本職、Lv1) 

サブジョブ:魔法使い(基本職、Lv1)

LV :1

HP :100

SP :50 

力  :25 + 13

敏捷 :20

体力 :25 + 5

知力 :40

魔力 :35

器用 :10

運  :50

親密度:100


スキル 剣術Lv 13、拳術Lv8 指揮Lv5 火魔法Lv1 闇魔法Lv10 気配察知Lv3  危機察知Lv 5 急所察知Lv 5  威圧Lv 1 軽業Lv1 


装備 鋼の剣 鎖かたびら


 さすが悪魔族。闇魔法のレベルが高いと、感心する結果になった。

次→ 30日、8時

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ