328話 目覚めると
目覚めると、仮面を被った青年姿のククさんが、見えた。
あれ? 僕、やられたはずじゃなかったっけ?
「いやー、良かったです。勝負は止めたにも関わらず、不意打ちで襲いかかるんですから。後で、クレスト神にもこの事は報告しときますよ。ちなみにあなたは私の蘇生魔法で死に戻りを回避してます」
なるほど。蘇生魔法は、確か神聖魔法をLv99まで上げなければ覚えられない高難易度の魔法だ。ただし、魔術の守護神であるククさんなら、蘇生魔法を使うのなんて朝飯前だろう。
「まぁ、私の方はまだいいんですが、問題はあちらですねぇ。止めてもらえませんか?」
僕が、ん? と思いながら示された方を見遣ると。
頭が痛くなるような光景が展開されていた。
「何やってるの、じいちゃん」
「あなたがやられた後、魔神とマクアが怒り狂いまして。どうやら、暴れたりないようだから、自分が相手をしようと言い出しましてね。さすがに、私はあなたの蘇生を優先させましたが」
「ありがとう、ククさん。ククさんが結界張ってくれてなきゃ、余波で多分、またやられてたよ。でも、マクアさん、天井から頭突き抜けてるんだけど。もぅ、天井なくなってるけど」
そう、巨人マクアはその真の姿をこの場で晒して暴れまくっていた。
「あぁ、勘違いしているようですね。天井を吹き抜けにしたのはマクアではなく、魔神の方です。まぁ、クレスト神の眷属である彼らも強いと言えば強い。下位に位置する神ならば、たとえ眷属といえど、ぼこぼこにやられてもおかしくないでしょう。ただ・・・魔神は少し、特殊です。神の序列である位自体は確かにそう高くありませんが、信仰に関してはかなり集めていますからね。下位の神が魔神をバカにしていましたが、力は魔神の方が上です」
まぁ、そうだろうね。薄々、じいちゃんも結構力が強いんじゃないかなとは、感じていた。専門分野では、クレストのおじさんやククさんには敵わないけど、それは二人がその専門を司る神だからという一面もある。武神が武に優れていないわけがないし、魔術の守護神という名を冠していながら、魔術に詳しくないなど、あり得ない。それを鑑みるとやはりじいちゃんはすごい。少なくとも、魔法は人に指南できるほどの実力があるし、武術も全く通じていないわけではない。
例えるならば、魔法剣士であり研究者。武術も魔法もそれなりにこなし、本を書けるほどに博識だ。
魔神が司るのが何なのかはよくわからないが、それでも知識の深さと戦闘技術は一朝一夕で身に付けられるものではないだろう。
話がそれたが、何が言いたいかというと。
「じいちゃん、すごい」
あれだけ僕が苦戦した連中の相手を一歩も引かないまま十把一絡げで相手をしてしまっている。素直に感心する反面、心配にもなる。そもそも、この行為は敵対行為に入らないのか、そこが心配である。
「ねぇ、ククさん。あれ、大丈夫なの? お城の方が保たなさそうなんだけど」
「大丈夫ですよ? 一応、私がいれば元に戻せますしね。・・・・・・終わったようですね」
砂埃がすごくて、周囲の状況を見られなかったが、やがて晴れてくるとその惨状に僕は顔をひきつらせた。
「この程度で済ませるとは、どうやら、本気であっても理性はきちんと飛ばさずにいてくれたようですね」
「クレストのおじさんの眷属が、全滅・・・」
クレストのおじさんの眷属が横たわるなか、じいちゃんとマクアさんが立っているのがまた。じいちゃんを、本気で怒らせないようにしようと、僕は誓ったのだった。




