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32話 修練の塔 7

 ーーーーー修練の塔3F。


「まずい! 取り囲まれた!」

「これヤバイよ、兄貴!」

「グルルルルルルルルっ」

 素早さの高い、灰色狼(グレイウルフ)に取り囲まれてしまったマサヤとユミアは、レベル差と数の力に屈して、力尽きた。

 二人は、ペナルティーとして、持ち物の幾つかを没収され、塔の外へとその身を放り出された。



ーーーーー修練の塔35F。


「キシャァアアア! キシャァアアア!」

「キィィイイイイイイイイ!」

 そこでは、二大怪獣激突ならぬ、二大魔物激突が起こっていた。

 シヴァ、ブラッド、ハイドの三体と対峙するのは、身長5メートルを越す大猿だ。

 大猿は、ボス部屋を縦横無尽に飛び交いながら、三体を切り裂かんと鋭い爪を振るう。

 ハイドは、自らの糸を行使しながら、それらを避ける。

 反撃の糸口が掴めずに、事態は膠着状態に陥っていた。

 大猿も、三体もまだ様子見といったところだが、大技を使うには相手に隙がなさすぎるために、どちらも必殺の一撃を放てずにいる。

 まだまだ、戦闘は始まったばかり。

 決着は長引きそうであった。



 ふわりとした軽い浮遊感に包まれたとと思ったら、見知らぬ場所に転移していた。じいちゃんに掴まれた腕はまだそのままだ。うん、痛い。放すか力を抜いてほしい。

「じいちゃん、じいちゃん」

 僕が呼び掛けると、じいちゃんははっとし、僕に笑顔を向けてくれた。

「何じゃ、テルア?」

「腕、力抜いてくれない? さすがにちょっと痛い」

 じいちゃんが自分の手を見下ろし、そこに繋がっている僕の腕を視認し、慌てて力を緩めてくれる。


「すまん、テルア! 無意識に掴んでしまっておった。大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

 本当は少し痛いけど、じいちゃんがあまりにも情けない顔をしているので、あえてやせ我慢を口にする。

 まぁ、じいちゃんにはいつもお世話になってるしね。サービス、サービス。


「うわ! テルア君の腕、アザになってる。それじゃあ、痛いよ。何やってるのさ、ジャスティス」

 ガンダムッポイノが、余計なことを言ってくれたので、僕のやせ我慢は無駄に終わった。

 じいちゃんはおろおろし始める。

「ヒール」

 僕は光魔法ヒールで、さっさとアザを治した。こんなことでじいちゃんが落ち込む必要ないから。いや、本当に。

「すまんかったのぅ、テルア」

「そんなに謝らなくていいから、じいちゃん。名づけと加護の付与、パパっとやっちゃおうよ。正直、お腹すいてきちゃった」

 時間を確認すると、もう夜の八時をまわっていた。夕食食べてないから、結構お腹の空き具合がヤバイことになってきてる。早くご飯食べたい。



「それじゃあ、テルア君の希望通り、できるだけ早く済ませようか。悪魔兵兵隊長の名前はどうするの?」

 僕は決めていた名前を告げた。

 チャップ。由来はコメディで名を馳せたチャップリンからとった。

 まぁ、結構呼びやすいし。

 じいちゃんの加護付与とジョブ選択も済んで、いよいよレベルドレインに入る。

 レベルドレインを行うのはガンダムッポイノなんだけども。

「本当に、いいの? 一回レベルドレインすると、経験値を溜めるまで、戻れないよ?」

「オネガイシマス」

 なんと、悪魔兵兵隊長改め、チャップは、レベル1まで戻ると言い出したのだ。

 いくら悪魔兵兵隊長でも、それは無謀だと僕もじいちゃんもガンダムッポイノも止めたんだけど、チャップの決意は固かった。ならば、もはや何も言うまいと、ガンダムッポイノがレベルドレインの儀式(?)を始める。

 具体的には、床に描かれた六茫星の魔方陣の中に入ってガンダムッポイノが呪文を唱える。


「我が前に立ちし、強者よ。その力を天へと今還さん。アーメンソーメンラーメンホソメン・・・」

 呪文につっこみはいれないよ。いれたら、レベルドレインが中断しちゃうから。

「すまん、テルア!」

「うわぁ!?」

 じいちゃんが唐突に僕に謝り、僕はじいちゃんによってレベルドレインの魔方陣の方へと押し出されてしまった。

 僕の体は自分の意思とは無関係に魔方陣の中へと入ってしまう。

 結果。


「・・・ホニャララ、プー!」


 魔方陣が青く光ったかと思ったら、僕の中で何かが大きく失われるのを感じた。

 ま、まさか。これって。

 嫌な予感がして、僕はすぐにステータスを確認したんだけども。


名前 :テルア・カイシ

LV :1


 れ、レベルが。僕のレベルが。


「1になってるぅぅううう!?」


 僕の絶叫が、最上階の小部屋に響いたのだった。

 


次→19時予定でしたが、書きあがらなかったので、20時に変更します。

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