317話 鍛冶の神 3
「えっと、今回は大層な物を頂きまして、ありがとうございます。改めて自己紹介します。テルア・カイシです。こちらでは異世界人って呼ばれてます。宜しくお願いします」
僕が簡単に自己紹介すると、カチさんはじろじろと僕を上から下まで眺めて、ククさんに向き直った。
「おい、クク神。まさかとは思ったが、こいつ、お前の眷属じゃないのか?」
「えぇ、そうですよ。彼はクレスト神の眷属です」
「そいつぁ、また。俺、やっちまったか?」
僕は、その会話の裏の意味がわからずに、??となった。
「多分、貴方が考えてるほど戦闘狂ではありませんよ、テルアは。まぁ、逸材ではあるので、個人的に修行をつけたりもしてます。だけど、私だけが教えてるわけじゃありませんよ。筆頭は魔神と武神です」
「なるほど。・・・・・・って、ちょっと待て。つまり、こいつ、武神と魔神のしごきに耐えてるってことか!?」
ええ、とあっさり自分の疑問を肯定されて、カチさんが絶句する。
「ありかよ、そんなの。そりゃ、魔剣が凄まじいことになるわけだ」
「えっと? じいちゃんと、クレストのおじさんの修行って、そんなに厳しいの?」
「根を上げる奴が続出するくらいにはな。そもそも気紛れで一回修行をつけられただけでも二度と受けたくないって話だからな。っと、話が脱線したな。クク神がここに来た用件はなんだ? 俺に依頼か?」
「えぇ、そうです。サイズ調製と縮小化の効果が付与された魔法具をつくってほしいのですが、できますか?」
カチさんは少し考える素振りを見せた。
「素材さえあれば可能ではある。だが、そんなものを造って何に使うんだ?」
「巨人マクアに使うんですよ。私がいうのもなんですが、マクアは巨体でさえなければ、あまり影響力もない存在ですからね。普通の人間程度の大きさにはするつもりです」
「あの巨体を、人間サイズに!? 正気か!?」
カチさんは驚愕し叫ぶ。そこまで驚くとは。マクアのことをカチさんも、よく知ってるようだ。
「ええ、そうです。素材は既に用意しました。縮小化の魔法を込めるのもこちらでやりましょう。造ってもらえますね?」
「造るの前提か。まぁ、いい。素材が揃ってるなら、造るのが俺の仕事だしな。魔法を込めるのはそちらでやって来れ。報酬は・・・できてから相談でかまわないか?」
ククさんが頷く。これで、交渉は済んだようだ。ククさんが立ち上がる。
「それでは、素材を置いていきますね。それと、テルアもここに自由に出入りする権利が欲しいのですが」
「構わん。俺は基本的にこっちの工房にいることが多いから、話があるならこっちに来てくれればいい」
話はまとまったが、僕はどうしても頼みたいことがあったので挙手して、頼んでみた。
「あの、カチさん! ちょっとだけ僕をここに置いてもらうことってできますか? 僕、カチさんがどんな風に物を造ってるのか、見てみたいんです!」
僕が頼むと、拍子抜けするくらいにあっさりと許可が降りた。だけど、ここへの出入りの許可ももらったので、僕は、有頂天だった。
三日後。巨人マクアに付けるための道具が出来上がるまで、僕は、カチさんの工房に入り浸ったのだった。




