315話 鍛冶の神
ログインするなり、僕は、みんなにぎゅうぎゅうにされていた。
「き、昨日は、師匠が来てくださらないので、何かあったのかと心配で・・・」
「あぁ、全然来ないから、異世界で何かあったのかと思った。心配かけるな」
「主よ! あまり気苦労を掛けないでもらいたい! 我らも心配していた故に!」
みんなから非難豪々の嵐だった。あれ、一応昨日じいちゃんには伝えたはずなんだけど、みんなの方には伝わってなかったのかな?
疑問に思ったけど、じいちゃんは今はお城の中にはいないようだ。いたら、絶対に僕に姿を見せるはずだし。
「ところで、じいちゃんはともかく、ククさんは?」
「連れていかれたぞ。老翁に」
「え? じいちゃんがククさん連れてっちゃったの? それは、みんなの修行遅れそうだね。僕が見ようか?」
当然みんなに否やはなく、僕は一時間程度みんなの修行に付き合った。
すると、じいちゃんがククさんと一緒にお城に戻ってきた。ククさんは、げっそりしつつ、僕にやり過ぎたことを謝罪して、僕もそれを受け入れた。途端、晴れやかな顔をする(といっても仮面つけてるけど)ククさん。どうやら、じいちゃんにお説教されて反省したそうだ。今度からは時間もちゃんと考えてくれるということで、話がついた。
「まぁ、正直色々つれ回したいのは山々なんですが。今回は見送ります。それと、マクアに渡す魔法具の作成に当たり、一人会わなければならない方がいるんですよ。早速ですが、今から転移して大丈夫ですか?」
「大丈夫! そんなに時間かからないよね?」
「えぇ」という肯定が返ってきたので、僕はククさんと一緒にお城から跳んだ。
そこは、一件の家屋の前だった。周囲は樹木に覆われて、家の近くには洞穴がある。洞穴の上の方から、もくもくと湯気が出ているのが印象的だ。
「どうやら、今は、工房の方にいるようですね。行きましょう」
促されて、ククさんの後について洞穴へと入る。中からは熱気が伝わってきた。
ここは、一体?
奥に進むにつれて、カンカンと金属を叩く音が響く。一番最奥には、誰かがこちらに背を向けて、金槌で何かを叩いていた。ここは、鍛冶場だろうか?
壁には幾つもの鍛冶の道具と思われる物がかかっているけど
「カチ! 少しいいですか!?」
「・・・・・・・・・。」
カチと呼ばれた存在は振り返らない。集中しすぎて耳に入っていないようだ。
「仕方ありませんね。少し待ちましょうか」
カチと呼ばれた存在が僕らに気づくまで、僕はカチさんの鍛冶風景を見ていたのだった。




