312話 巨人マクア 3
さて、泣いても叫んでも逃げようとしてもどうにもならないことがあると既に悟っている僕はククさんの授業を受けて出がらしになってしまった、サイガ達の横で、ククさんと向かい合っていた。
「そもそも、巨人マクアが犯した罪というのが、ゴーレムによる大量虐殺でした。巨人マクアが造るゴーレムはとても大きく、頑丈で、人間や亜人たちが相手取るには、強すぎたのです。それ故、マクアが製造したゴーレムによって、巨大な帝国が滅びたこともあります」
「ふむふむ」
「おまけに、巨人マクアは常に場所を移動していて、良い土が手に入る場所に陣取ってはゴーレムを造り、それを放置しては、大地に血が流れました。そのことを豊穣神であるアルルン様が嘆き、怒りを見せたのです。アルルン様がゴーレムを元の土へと全て還して、クレスト殿がマクアの体をバラバラにし、私がバラバラにされた体を一個一個封じていきました。なかなか面倒な作業でしたが」
「なるほど。でも、話を聞いてる限りじゃ、なんだかマクアがものすごく悪いことしたっていうより、ゴーレムを放置して被害を出さなきゃ、普通に暮らせたみたいにも思えるけど」
僕が感想を述べると、ククさんは苦笑した。
「そうですね。実際、彼が巨人族でなく、普通の人間サイズで、ゴーレム自体も力のない弱いものであったならば、結末は変わったかもしれません。ですが、巨人族であり、彼が造るゴーレムは驚異であり、被害をもたらした。封印されるには十分な理由でしょう」
封印された経緯は大体わかった。ただ、ここで僕は思い付いたことをポロリとこぼしてしまった。
「それなら、ハイドに掛けたみたいな、魔法で常に縮小化とかできたら、マクアも普通に歩き回っても起こられなさそうだね」
「・・・・・・・・・!! そうです、その通りです、テルア! 私としたことが何故今まで気づかなかったんでしょう? 要はマクアが造るゴーレムが力がなく、普通に倒せるだけのもので、マクア自身も小さくなれば驚異とはならないはず。つまり、常に縮小化による身体能力やゴーレム作成能力に封じられればいいので、魔道具によってそれらを行えればマクアを封じなくても良いはず・・・」
あ、まずいかも。魔法スイッチ入った気がする。
「テルア! これから忙しくなりますよ! 確か、テルアは移動魔法を使えましたよね? それなら、一瞬で実験に必要な素材の採取場所にも飛べるはずです。最初は私が行く場所を予め見せますから!」
うっわ! やっちゃったよ、ククさんの魔法スイッチ押しちゃったよ! に、逃げたいけど、逃がしてもらえそうにない。
「少し待ってくださいね! 今必要な素材をピックアップしますから。それを取りに行ってきてください!」
「断れないんだよね?」
鼻唄混じりに、必要な素材を紙に書き出し始めたククさんは、断られるなど思ってもいないのだろう。じいちゃんが、なにやっとるんじゃ、と視線で訴えてくる。
僕のせいなの、これ!? いや、不用意な一言を言ったみたいだけども!
「あ、そうです! 貴重な薬草や、魔法薬の原料は、素材の剥ぎ取り方も知らなければ、入手できませんね!私が一緒についていきますよ。さぁ、今日中に全ての原材料を揃えますよ、テルア!」
ざっとリストアップされた紙を見て、僕は目眩がした。
あははははー、何これ? 僕が覚えた「魔物大図鑑」でも、特に危険とされてる魔物の素材がずらっと並んでるんだけど。しかも、ティティベル神の瘴気とか爪とか書いてあるよ。
これ、全部今日中に集めるって・・・。
「あぁ、ちなみに私は案内とサポートと剥ぎ取り方を教えるくらいしかできませんから。倒すのは任せますね」
目の前が真っ暗になった。今日も睡眠不足だよ!




