311話 巨人マクア 2
「巨人マクアについて聞きたい? いきなりじゃのぅ。なんでそんなこと聞くんじゃ?」
「昨日巨人マクアっぽいのに出くわしてさ、詳しくじいちゃんに聞いてみようと思って。一応、フェルマの街でも調べてみてるけど、大した情報なくてさぁ」
僕が、マクアに出くわした一部始終をじいちゃんに語ると、魔物組が羨ましそうに僕を見てきた。ちなみに、移動魔法を初見したマサヤには、もはや何でもありか、お前はぁぁああ! と叫ばれたけど、いつものことだよね、多分。
「みんなも話に加わってもらっていい、じいちゃん?」
「構わんぞ」
じいちゃんの許可が出たので、魔物組とサイガとナーガまで加えて、ちょっとしたお茶会が始まる。場所は当然、じいちゃんの居城の一室だ。
ここで温羅さんとじいちゃんはみんなに移動魔法を叩き込むらしい。
なにせ、使えなきゃ出られないからね、ここから。
戦闘でも、使えれば戦略の幅は大きく広がるのと、普通に使用できれば便利ということもある。
ただし、ここで問題がある。肉弾戦を得意とするサイガや金閣、ハイドは魔法の素質が低い。簡単に言えば、魔法使いとしてよりも肉弾戦に向いてるため、魔法を覚えるにはとんでもない苦労をする羽目になる。ちなみに魔法的素質が一番高いのはチャップ、次いでブラッドとヤマト、三番手に挙がってくるのがナーガとなる。シヴァは生産職メインなので、どちらもそこそこ覚えやすい。銀閣もどちらかと言えば魔法的素質は高くないが、普通と言っていいくらいにはある。
こうしてみると、飛び抜けてではないものの、チャップが一番戦闘の素質が高いかもしれない。本人の努力もあるが、魔法も物理も現時点である程度こなせるし、僕と会う前には悪魔兵兵隊長をしていたくらいだから、指揮をすることもできる。
移動魔法も、僕が覚えた翌日には覚えていた。
師匠の弟子である自分が使えないなど、師匠の顔に泥を塗る行為です!とか奮闘していた。ちょっと、鬼気迫る勢いだったから、誰も声を掛けなかったぐらいだった。
「幻惑魔法の腕も上げたいか、やることは山盛りです。ふふふ、また練習を見てもらえますか、師匠?」
「来てるときなら、いいよ。でも、その前に、チャップについてきてもらおうかな。巨人マクアに接触するなら、戦力補充はしておきたいし」
「ふむ、そうじゃな。チャップなら問題ないじゃろ」
「私がですか? 光栄です」
キラキラした笑顔のチャップに、様々な視線が注がれる。ほとんど、羨ましいというのと、嫉妬だけど。説得するために話術も巧みになりそうだね、チャップ。
まぁ、いいや。あと、来てほしいのは・・・。
「じゃあ、あとナーガと、ヤマトとブラッドかな。物理攻撃はあんまりやりたくないし。ちょっと魔法よりでいくよ。まぁ、その前にマクアのことについて教えてよ、じいちゃん」
「マクアなぁ。儂も詳しいことはあんまり知らんのじゃが。そういえば、豊穣神を怒らせて封印されたと聞いたのぅ」
「弱点とかあるかな? さすがにあれと戦うとなると、かなり大変だと思うし」
「巨人族に、弱点はあまりありませんよ。彼らは不死で、それ故に封印するしかなかったのですから」
「へぇ。・・・っ!?」
「なんじゃ、来とったのか、お主」
「珍しく貴方からのお誘いですからね。それに、移動魔法を教えるというのはおもしろそうでしたし」
壁に背を預けながら、口許に三日月を描いているのは、仮面を被った男性だった。
「それに、色々と話をしたかったのですよ、私の生徒とね」
たらり、と僕の背中に汗が流れる。
魔術の守護神ククが楽しげに笑っていた。




