310話 巨人マクア 1
「堅かった〜」
僕はぼやきながら、眼前で崩れたゴーレムの成れの果てを見下ろす。とにかく、ゴーレムは堅い。物理攻撃はほとんど効かず、素材によっては魔法耐性を持ってるものさえいる。今回当たったのは、物理防御は言わずもがな、魔法耐性も得ているやつだった。
今は、樹林(?)を探索中だ。ひとまずここから出られなければ、魔界を好きに動くことなどできない。
最初に出てきたゴーレムはそこまで強くなくて魔法二・三発で倒したが、徐々にゴーレムの強さが増してきているので、SPの消費が案外激しい。出口を探しているだけなのに、これはひどいな、と思いつつ、歩を進める。見たことのない動物型のゴーレムも進むにつれ増えてくる。種類が多くなると、動きも多彩になってきた。狼のような動きや、鳥のような動き、自分の形に合った動きを無理なく再現してくる。そもそも、ここにはゴーレムしかいないんだろうか?
そんな疑問が脳裏をかすめる。やがて、僕らは木もなんにもない、地面に大穴が空いている場所に出た。
ここは、なんだろう?
穴は、今さっきえぐったような跡がある。
僕の危機察知が何かの反応を捉えた。後ろのマサヤに合図を送る。
僕らが警戒してるなか、それは姿を現した。まず、見えたのは足だった。次に、腰、お腹、胸ときたが、それ以上は高すぎて全貌を知ることはできなかった。
直感する。
これが、マクアだと。
幸いマクアは僕らには気づいていないようなので、僕らは物陰に潜み、マクアの様子を伺った。
すると、マクアの腕が降りてきて、穴が開いた場所に指を入れ、土を手にのせたまま、上へと持っていく。何度かその動作が繰り返されて、気が済んだのか、マクアは再び移動していった。
後を追うか、悩んだけど。
「悪い、テルア。腰抜けて立てなくなった」
悔しそうに助けを求めるマサヤを放ってはおけないので、マクアに印をつけるのみにしておいた。
マクアはここでなにをしているのだろうか?
そもそも、どうして動けているのだろうか?
再びマクアと接触して、是が非でも理由を突き止めたい。
僕は遠ざかっていくマクアの後ろ姿を見送りながら、ひとまずマサヤが立って歩けるまで待ち、移動魔法でアールサンの街まで戻ったのだった。




