304話 ひとまず、持ち帰ってマサヤに見せてみた。
「マサヤ〜! ごめん、待った?」
僕は、アールサンの街の水晶広場で立っているマサヤを見つけてすぐに駆け寄った。マサヤは少し不機嫌顔だ。
イベントから既に三日経過している。今日、拾ったものについて相談したくて、マサヤにメールを送ったのだ。
マサヤの方は当然部活で疲れているはずだから、少し機嫌が悪いみたいだ。
「ったく、急に呼び出すなよ。まーたお前が何かしでかしたんじゃないかって心配しただろが。で、今日は何の用だ?」
僕は、ひとまずマサヤと落ち着いて話すために、広場近くの喫茶店に入った。
「実はさ、これ拾ったんだけど、処分に困っちゃって」
腰を落ち着けて、テーブルの上に今日偶然に入手してしまった物をテーブル上に置く。マサヤがびきっと固まった。無理もないかもしれない。なにせ、僕の身長の半分くらいはある人間の指らしき物体をいきなり見せられたらねぇ。
「!? !? !!?」
声にならない叫びを上げながら、必死にテーブル上の物を指差すマサヤに笑ってしまった。顔、すごい、ひきつってるんだもん、マサヤ。
「こんなもん、拾ってくんなぁぁあああ!! 元の場所に捨ててこい、今すぐ捨ててこい、気持ち悪いだろがぁぁあああ!」
ようやく声を出したマサヤは、動揺してるのか僕の襟を掴んだかと思うと何故か投げ技を仕掛けてきた。
マサヤ、剣道部だったはずなんだけど。
受け身をとったので大事には至らない。
と、そんなことより、マサヤを落ち着かせないと。なんだか、暴走してそこかしこを切り刻みそうな気がする。
ぱちっと指を鳴らしてマサヤの上から大量の水を落として、さらには浄化も掛けると、マサヤがはっとした表情で我に返る。
「お、俺は一体・・・?」
「あまりの驚きに一時的に錯乱されたようです。可哀想に、何がそれほどあなたを驚かせたのですか?」
「って、真面目な表情で同情しやがってるが、全部お前のせいだろが、テルア!」
「いや、ごめん、マサヤ。マサヤの狂乱っぷりがちょっとおもしろくて」
「ぶっ倒すぅぅうううう!」
その後、マサヤがマクアの指を掴んで振り回し始めたので、僕は逃げ回ることになった。もちろん、マクアの指を振り回すマサヤにそれから逃げ回る僕は街中でも悪目立ちしたので、何人か漁夫の利を狙った輩が魔法やら、スキルで攻撃してきたので全て返り討ちにさせてもらった。マサヤの気が済むまで付き合っていたら、マサヤが息切れして、ひとまず、収まったけど。
「もう、マサヤ! やりすぎだって! 街中で目立ったじゃないか」
僕が文句を言うと、マサヤは僕の周囲を指しながら反論してきた。
「お前よりは絶対ましだと思う」
僕の周囲には、僕やマサヤを攻撃しようとしてきたPKが、死屍累々の状態で倒れていたのだった。中にはNPCもいたようで、ひとまず、手加減優先で相手したので、全員気絶状態に陥ってるだけだ。
「この人数相手に手加減とか。どんだけ強いんだよ」
「いやー、だって作戦もあるみたいだったけど、基本的にシヴァの薬でなんとかなるから、つい」
僕は、自分もちょっとやらかしてしまったことを反省したのだった。
次→10/24 19時もしくは21時




