303話 これ、どうしよう?(※)
すみません。短くなりました。
それは恐ろしいほどの速さで森の中へと消えていく。追いかける者たちは、必死にそれを追いかけるが距離は開いていくばかりだ。なんとか、闇魔法で、相手の動きを鈍らせようとしても、そもそも魔法の効きが悪い。多少気休めに遅くなったくらいで、彼らはまるで象とアリが勝負をしているかのごとく、結果は惨憺たるもの。
結局誰一人として彼らはそれに追い縋ることができなかった。森を駆け抜けようとそれが一際速度を上げた時に、思わぬ事態が起きた。
それの前の空間が揺らぎ、進行方向に何者かが一瞬の内に現れる。
それは止まれず、あわや、その何者かに衝突しかけたところで、それの動きが止まった。
何者かの指先から出ている糸がそれをがんじがらめにして、縛り上げる。
抜け出そうとするそれだが、もがけばもがくほどに糸は絡まり、拘束力が増すだけだ。やがてそれは自力で動くことさえできなくなってしまった。
それを見た赤髪の少年は、うげぇ、と声を上げた。
「これ、マクアの指だ。なんで、こんなところに?」
小首をかしげながら、少年は拘束した指をどうするか思案するのだった。




