300話 イベント後の手合わせ 2 (※)
おまたせしました。うぉ!気づけば300話。よく続いたな、これ。自画自賛しとこう。(*´ω`*)
「くっ、各自距離を取りなさい!」
なんとか指示は出したものの、鋭く視線を投げられ、まずいと悟る。確実に今、自分が次の標的にされたことがわかった。踏み込みをしようと深く沈めた体はさながら、発射を今か今かと待つ弾丸。その小さな体に収まりきらない、覇気は威圧感となって周囲に広がっている。
(そうです。これこそ師匠。こちらが一矢報いようとしても、その上を鼻唄混じりに行ってしまう。本当に、追いかけるのが、大変な師匠です! !?)
眼前に、氷の矢が十数本出現した。避けられないタイミングを狙っていたのであれば、これは凄まじいと評価するしかない。苦笑さえチャップは漏らしてしまう。
避けきれないならば、せめてダメージを少なくしようと花烈大破を放とうとするが、その前に銀閣が取り出した芭蕉扇を使った。吹き荒れる暴風に、氷の矢があらぬ方向へと飛ばされる。
「ぬぅ!?」
「どうした、銀閣!」
「何故か、動けん、金閣!」
動きを止めてしまった銀閣は、必死に動こうとするが、それは叶わない。即座に背後から迫った影が、銀閣の意識を刈り取る。さながら、魔物組にとっては小さな死神のようだ。
「三人目。僕の攻撃手段は一つじゃないよ?油断しちゃダメだよ」
諭しながら、テルアが指に巻きつけた鋼糸を見せる。
銀閣の動きを奪うために鋼糸を用いたらしい。確実に各個撃破していくテルアと、それを見抜けず数を減らされる自分たち。
どうすればと思考する猶予さえ、相手は与えてくれない。戦闘中に呑気に相手に思考を許すほど、テルアは甘くなかった。
「なめるな!」
ナーガは、テルアの急所めがけて躊躇いなく弓矢を引いた。
ジグザグに走るテルアに、それでも狙いを付ける動体視力と腕は凄まじい。
だが放たれる前にテルアが追い付こうとしたところで、テルアは大きく右に跳んだ。
それに合わせて矢を放つ。直撃すると喜んだのも一瞬で、これでは倒せないことをナーガは悟る。
「本を盾に・・・!」
「回避するか、あるいは防御するかは徹底的に仕込まれてるから。避けられないなら、受け止めるだけだ」
パチン、と指が鳴らされた。空中にいたブラッドに、幻惑魔法で隠されていた十本のナイフが突き刺さる。悲鳴を上げながら、ブラッドは地面に落ちて動かなくなった。
「!!」
「敏捷は高いけど、防御力が弱いのがブラッドの弱点。さて、これで半分程に減ったね」
倒れたのは、シヴァ、ハイド、銀閣、ブラッドの四体。残っているのはナーガとサイガ、金閣、ヤマト、チャップだけ。
戦闘開始から半分に減ったが、それなのに、魔物組もサイガとナーガも悔しくて苦しくて、だがそれ以上の歓喜を覚えていた。
こうでなければ。
その強さが、自分たちを束ねる者としての資格であり、自分たちが憧れた理由であり、側にいたいと思わせた最大の要素なのだから。
だから、例え全滅させられるとわかっていても、誰も勝負をあきらめたりしないのだ。
今できる限りの連携で対抗する。
言葉にせず、それなのに全員の意思は一致した。
彼らは最後の攻勢に出るべく、互いに視線を送り合うのだった。
次→ 20日の19時or21時




