3話 武器講習を受けよう!
講習のために、僕が冒険者ギルドに入ると、あちこちから視線が飛んできた。
多分、アバターが完全に子どもの姿だから、珍しいんだろうね。
僕は、特に気にせず、カウンターと思われるところまで行ったが人がずらっと並んでる。順番待ちして、ようやく僕の番になる。丁度、カウンターの下には台が置いてあるので、それを踏み台にさせてもらう。
「こんにちは 」
僕がカウンターの上に顔を出して、声を掛けると、カウンターに座っていた女性がにっこりと営業スマイルを浮かべた。
「あら。こんにちは。小さなお友だちは珍しいわね」
「すいません。武器の講習の予約をしていた者なんですけど」
お姉さんの言葉を軽くスルーし、僕が用件を切り出すと、お姉さんは納得したように頷き、仕事に入った。
「予約したときにもらった紙をもらえるかしら?」
僕が予約用紙を渡すと、お姉さんは手際よく講習受付の用紙を出して、受付してくれる。
「講習は、この冒険者ギルドの地下の訓練所で行われます。すでに始まっていますのですぐに下に行ってください」
僕が下に行くとすでに講習は始まっていた。たくさんのプレイヤーが肩を並べながら、講習を聞いている。だけど、僕は訓練所の内部に気をとられてしまった。よく作り込まれてるなぁと感心してしまう出来なのだ。木材でできたカカシが並び、壁の一角には、木製の剣や弓が置いてある。今は、講習のためか鍛練している人はいない。大きなスペースを貸切り状態だ。ちょっと気分がいいね。っと、全然話を聞いてなかった。集中集中。
講習の内容は主に武器の説明だった。
武器の種類は、大まかに分けて八つ。
剣、拳、槍、斧、弓、銃、杖、その他となっている。
剣は基本的に敏捷、力、体力に補正がかかり、全てがバランスよく強化される。
拳は、敏捷が突出し、力と体力の補正は低めだ。
槍は、敏捷の補正が低いが、力と体力の補正が若干高めで、間合いも広い。
斧は、敏捷と体力にマイナスがつくが、逆に力はすごくよく上がる。
弓は、力と器用さに補正がかかる。近接戦はだめでも遠距離から射かけられるのは大きなアドバンテージだ。
銃も弓と同じく力と器用さに補正がかかるが、少しだけ速さにも補正が入る。ただし、弓に比べると間合いが短い。
杖は、武器の中で唯一、知力が上がる。速度も若干上がるが、それだけでなく、魔法の範囲を拡大してくれる。
その他は、様々な特殊な武器だ。例えばモーニングスターとか、毒針とか、鎖鎌や、鞭等が当てはまる。中距離武器が多い。ざっとこんな感じだった。
続いて、質問コーナーに入ったんだけど。すぐに一人のプレイヤーが手を挙げた。
「あの、すいません。さっき武器の説明で、職業・・・つまりジョブによって扱いやすい武器や扱いにくい武器があるって言ってましたよね? そうすると、扱いやすい武器の場合、習熟しやすいってことですか?」
担当の男は特に嫌な顔をせずに答えてくれた。
「その通りだ。剣士だったら、剣術のスキルレベルが上がるのが早いし、剣が一番扱いやすい。猟師だったら、斧術と弓術の上がりがいい、といった具合だ」
「あの、魔物使いは?」
僕がすかさず手を挙げて質問すると、男は困ったように頭をかいた。
「魔物使い? あれは、武器の習熟に関しては最悪なジョブだぞ。唯一まともに扱えるのは杖だけだ。それにしても、魔法を覚えないといけないから、あまり初心者で魔物使いをやるやつはいない。冒険者ギルドでは転職の案内もしている。もしも魔物使いになってるなら、今すぐ転職をおすすめするぞ。スキルレベルが高くないと、魔物を仲間にすることもできないからな、魔物使いは」
「え」
ひどい言われようだ。さらに周囲にいたプレイヤーが笑いながら、「何も知らないでやんの」と陰口を叩く。
ま、魔物使いがあまり武器を手にして戦うのに向いてないことはよくわかった。わかったけど、魔物使い=弱いという図式が成り立つわけではない。
ようは、強い魔物を仲間にすることができればいいのだ。
「まあ、どんな職に就こうが基本的に個人の自由だ! だから、どうしてもこうなりたいって思う職業なら、極めてみるのも一つの手だと思うぞ。極めるには、相応の努力と時間が必要だがな!」
「はい、助言、ありがとうございます。頑張ってみます」
どんなに笑われても、ばかにされても、魔物使いをやめる気は僕にはない。
だって、どんなに考えても、僕がなりたいのは魔物使いしかないから。
サブに狙ってる道化師だって、元々メインに魔物使いを選んでなきゃ、選ぼうと思わなかったはずだ。それくらい、魔物使いには思い入れがある。
「あ、あの! 俺、レア職の忍者に就きたいって思ってるんですけど、どうやったらなれますか!?」
誰かが、レア職に就くにはどうしたらいいかを質問した。って言うか、これ武器講習なのにいいのかな、こんな質問して。
僕が首を傾げる間に、返答があった。
「レア職ってのは、その名の通り、滅多に就けない職業だな。なんでも、特殊な条件をクリアしねえと、就けないんだとか。俺も詳しくは知らん」
ロッツさんの言葉に、僕は自分の幸運に感謝する。師匠に出会えたことは、僕にとってものすごい幸運だったらしい。この幸運を大事にしようと思う。
「まあ、目当ての職業に就いてるキャラかプレイヤーを見つけて、職業につく条件を聞いたらいいと思うぞ。他に質問は?」
特に質問は挙がらない。大体、みんなが聞きたいことは聞けたという感じだろう。
「じゃあ、ちょっと、各武器の基本的な技を見せてやる。しっかり見ておけよ」
講習担当者が、基本的な武器技の説明と実演をしてくれる。
へえ、やっぱりこんな風に実際にスキルを見てみるとおもしろい。
スキルは、大体レベルが5上がると一つ覚えられるみたいだ。
僕が今使えるのは剣術Lv1で覚えられる「二連斬」だけだ。
武器スキルは、武器を使えば使うほど増えていく。この訓練所で練習しても、スキルレベルは上がるらしい。
ふむふむと頷く。
「これで講習は終わりだ。もし、新しいスキルを覚えたんなら、この訓練所で一回試してから実践したほうがいいぜ。どんなスキルか把握もせずに使えば、SPの無駄遣いになりかねないからな。俺からは以上だ。ああ、そうそう。もしもレベルを上げたいんなら、初心者はフィーガの洞窟に行くといい。あそこなら、あまり強い敵はいねえからな。この街の南門を出て、東にまっすぐだ。平原にも魔物は出るから、ちゃんと装備は整えてから行くようにな」
こうして、僕は武器講習を終えた。
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