表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/424

28話 修練の塔 3 (※多数視点)

 修練の塔は、全99階。階層は大まかにわけて三層にわかれる。

 初心者から中級者向けの1〜35階を下層、36階〜50階までが中級者から上級者向けの中層、そして51階以上は上級者であっても気を抜くと死と隣り合わせの上層とされている。

 

 修練の塔、最上階で、この塔を管理している存在は塔への挑戦者が現れたのをちゃんと察知してした。挑戦者は全部で三人と三体。

 うち、二人は下層の1階に飛ばされ、三体の魔物は、31階スタートだった。

 そして、残りの一人はというと。


「まさか、いきなり60階からスタートさせることになるなんて思わなかった・・・」

 そう、最初に塔へ挑戦したプレイヤーはステータスを鑑みて、60階スタートになったのだ。これには、管理者も驚いた。正真正銘の修練の塔の最初の挑戦者がまさか、いきなり上層スタートだなんて。

 それだけではない。今、その上層の挑戦者の様子を各階に設置した監視の魔法具で確認したのだが。

 とんでもない方法で、悪魔兵たちの相手をしていた。

 いや、これは相手をしているとは言わないかもしれない。しかし、すごい。

 戦わずに(・・・・)悪魔兵らの相手をできるプレイヤーが、一体何人いるものか。

 強くなることは、どんなプレイヤーでも頑張ればなれるし、そのうち、やって来るプレイヤーで、悪魔兵たちを全滅させる力を持った強者も出てくるとは思う。

 だが、こんな突飛な発想を思いつき、尚且つ実行に移すような人間は、おそらく一握りもいやしない。

「〜〜〜〜〜っ! ダメだ! もう我慢できない!」

 管理者は、塔の内部ならいくらでも好きな場所に転移できる。

 それを利用して、管理者は最上階から60階へと転移したのだった。



 ーーー修練の塔、1階。

「二連斬!!」

 気合いと共に放たれたスキルによって、ハイゴブリンは幾らかダメージをもらったが、倒れるまでに至らない。

 今度はこっちの番だと言いたげに反撃してくるハイゴブリン。


「ちっ」

 舌打ちと共に、マサヤはハイゴブリンから距離を取ろうとした。だが、なかなかに敏捷が高いのか、動きに追いついてくる。

「ランクが1上がっただけで苦戦かよ」

 ぼやきながら、マサヤが相手の隙を伺っていると、横合いから不意をついての魔法攻撃がハイゴブリンに決まる。

「「アイス・アロー」!? ってことは・・・」

「大丈夫、兄貴!」

 マサヤが氷の矢が飛んできた方向へと視線を向けると、そこにはユミアが立っていた。


「なんだ、お前もこの階からか」

「そうみたい。まぁ、兄貴とすぐに合流できてあたしとしてはラッキーだけど。他のみんなは?」

「出会ってねぇな。飛ばされたのはこの階じゃないのかもな。あのじいさんは、テルアは上層にいるって言ってたし。まだまだ上じゃね?」

「そっか。じゃあ、階段探しだね、まずは」

 二人の兄妹は、いつもの通り二人組で、この修練の塔の上階を目指すのだった。



 ーーー修練の塔、31階。

 雄叫びと共に、突進してくる一角獣。

その背後からは、植物系の魔物である食性植物(マッド・イーター)が蔦を伸ばし、横合いからは一つ目巨人(サイクロプス)が棍棒を振り回しながら、やって来る。

 絶対絶命の危機、かと思いきや。

 シヴァ、ブラッド、ハイドの三体は非常に冷静だった。

 もしもこれが、一体のみであれば、撃破などという危険率の高い選択肢は選ばなかったろう。逃走するなりなんなりしたはずだ。

 だが、ここには三体揃っている。

 他ならぬ主のテルア、ジャスティスにその連携を認められた三体ならば、この状況も窮地ではなく、華々しい活躍ができる、戦いの場へと変わる。


 三体が動いた。


 一角獣は、目標にハイドを選択していた。一番大きい的であったからだ。

 だが、一角獣はハイドの体に角を突き刺すどころか触れることさえできなかった。

 何故なら、ハイドが予め天井へと伸ばしていた糸により、その巨体を天井間近へと一時的に引き上げてしまったからだ。

 さらに一角獣の誤算は続く。ハイドを隠れ蓑にしていたが、一角獣の予想進路上を、シヴァは大きな舌でなめまくり、唾液まみれにしていた。

 そんな、場所を高速で駆け抜けようとしたらどうなるか。


 ツルリ。


 脚が滑り、一角獣は姿勢を立て直すことができずに横に倒れ込んだ。そこにすかさずブラッドが襲いかかり、鋭い牙を、一角獣の首筋に埋める。

 一角獣から悲鳴が上がった。


 ぶちぶちぶちぶち。

 

 ブラッドが、一角獣の首を食いちぎる。超音波を併用したからこそできる荒業だ。

 一角獣は、ビクビクと体を痙攣させ、やがて動かなくなった。

 

 だが、気を抜くことはできない。


 あと二体の魔物が残っている。


 ハイドは食性植物に向かって、大量の糸を吐き出した。食性植物に白い糸がどんどん巻き付き、やがて満足に身動きが取れなくなる。糸巻きと化した食性植物を、ハイドは引き寄せ、脚を使って一つ目巨人に投げつけた。一つ目巨人は、あまり頭が良くない。

 自分に飛んできた障害物を排除しようと、棍棒で何度も殴り付ける。

 食性植物の動きが緩慢になっていき、完全に静止した。


 これで残りは一体だ。


 一つ目巨人は、気づかなかった。

 食性植物を障害物にしたのは、時間稼ぎのためだったと。

 罠は完成し、獲物を陥れる。

 まず、ブラッドが超音波を現時点での最高出力で放った。

 聞こえずとも、一つ目巨人に影響が出る。平衡感覚が失われ、一つ目巨人はひっくり返る。

 次に気配を殺して忍び寄ったシヴァが一つ目巨人に攻撃を仕掛ける。

 一つ目巨人にあまりダメージはない。

 一つ目巨人が起き上がろうとする。

 超音波を放ったブラッドが、一つ目巨人の棍棒を持つ腕を狙って牙を突き立てたが、一つ目巨人は頑丈だ。

 すぐに振り払われてしまう。

 が、ブラッドはその高い敏捷を活かして、二度三度と、一つ目巨人に細かい攻撃を加えていく。

 徐々に、一つ目巨人の様子がおかしくなっていった。


 一つ目巨人は息を切らし、大きな口を手で覆う。

 がはっと吐き出したのは、一つ目巨人の黒い血だった。


 種明かしをすると。


 シヴァの攻撃はただの攻撃ではなく毒攻撃だった。そして、ブラッドが生命力吸収で一つ目巨人のHPを少しづつ奪っていった結果、一つ目巨人の体に入った毒の効果が現れたのだ。

 さらにブラッドは攻撃の度に、ハイドの出した糸を、一つ目巨人に巻きつけていき、動作を鈍らせることもしていた。

 最後の止めは、一番攻撃力の高いハイドだ。

 ハイドはシヴァとブラッドが一つ目巨人を引き付けていてくれる間に、ずっと最高の一撃を放てるよう、力を溜めていた。

 ハイドは一つ目巨人に特攻をかけた。

 毒の影響で気分が悪くなり、ふらついている一つ目巨人は、ハイドの攻撃をかわせない。

 ハイドの八本の脚が一つ目巨人の体に一撃ずつ加えていく。

 合計、八撃。

 通常攻撃のおよそ四倍の威力。

 一つ目巨人は絶叫を上げ、その場に倒れたのだった。

 

 


 


 次→19時

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ