276話 億万長者を目指せ
遅くなりました、すみません。次の更新は明日の19時か21時です。
とにかく、決着をつけるなら、もっと穏便な方法でつければいいはずだと力説した僕の意見を取り入れて、二人はひとまず争うのをやめた。ただし、二人同時に穏便な方法とは何かを聞いてこられて困った。
そんな僕に、ブラッドが持ってきたのがスゴロクだった。絵が色々描いてあり、おもしろそうだと思って村で購入していたらしい。
でも、それ僕の見間違いじゃなきゃ某有名どころのボードゲームみたいなんだけど。いや、つっこむのはやめておこう。運営のお遊びだということにした。
そして、どうせならばと二チームに別れてゲームを始めたら。
「うわぁ! なんじゃこれは!? まったく、いい目が来んのじゃが!!」
悲惨! 出た目分×1,000倍、全員にお金を支払う、というマスに止まってしまった温羅さんは悲鳴を上げた。
「あぁ、まぁ、そうでしょうね。ヤマトも私もシヴァも運が高いですから。それでも師匠には敵いませんが」
賽子をふりながら、飄々とのたまうチャップ。カラコロカラコロ。
出た目は六。六、コマを進めたところには、幸運の鍵を入手する。サイコロを振って、出た目×1,000倍、銀行からお金が支払われる、とある。
億万長者を目指しながらゴールを目指すゲームなのだが、留まったマスによっては、ボードゲーム内通貨を支払ったり、もらえたりするのだ。
最終的に一番財産が多くゴールした人の勝ちになる。
ちなみに今の僕の資産は何故か一億を越えている。職業を選ぶときに一番高い仕事がいいかなと、医者を選んだら、その医者がエリートコースまっしぐら!となり、月収が百万近くなったのだ。一巡する度に、お給料が支払われるので、十回もすればざっと一千万程になった。そこから、株を買ってみたら、その株が値上がりし、五千万となり、株を無理矢理誰かに二倍で売り付けるというマスに止まったので、サイコロを振ると、当たったのが温羅さんだった。おかげで温羅さんは借金を背負ってしまっている。
「う、うぅぅうううう。ここから逆転とか不可能じゃけぇ。もぅ、わーの負けでいいわ」
心が折れた温羅さんは、ゲームを投げ出した。そのまま、いじけている。
大の大人が恥ずかしくないのかなと思いつつも僕はサイコロを振った。出たのは四。四マス進むと、悪魔の誘いと出た。
悪魔が現れ、あなたをギャンブルに誘った。あなたは誘いに乗ってしまい、全財産をギャンブルに注ぎ込んだ。サイコロを振り、一が出れば全財産が二倍になり、その他の出目が出れば全財産を失います。
ありゃ、厄介なマスに留まったなぁと思いつつ、サイコロを振った。
出た目は三。一億ちょいが一瞬にして吹っ飛んだ。
「な、まさか師匠が!」
「温羅さんが負けを認めた途端、僕も全財産を失うとか、やっぱりゲームはおもしろいね」
「そんなん、ありか!? わーが抜けた途端、一番じゃったテルアが一文無しとか、ひどすぎるじゃろ!」
わーわー、文句を言う温羅さんだが、後の祭だ。
そのまま、ゲームは進み、僕が最下位でゴールかなと思ったところで、再び変なマスに留まった。
天使からの贈り物。心を入れ換えて真面目に働くあなたに天使が微笑んだ。今までギャンブルで失った財産があれば、全て戻ってくる。
「ゴール手前で、また一億ちょい戻ってくるなんて、ビックリだね」
「やっぱり、わー、ゲーム降りてて良かったわ」
結局、ゲームは僕が一位だった。最下位が北の森の主(酒呑さん)と温羅さん。二人は、喧嘩していたことも忘れて、やけ酒を飲んでいる。まぁ、仲良くなったならいいのかな?
すねる、温羅さんたちに、僕は一つ鑑定をお願いした。この島の神である温羅さんなら知ってると思ったからだ。
「こりゃ、ええもん見つけたのぉ、テルア」
それを見つめる温羅さんは心底楽しげにしていて。
僕は、早まったかもと、己の浅慮を痛感するのだった。
 




