269話 鴨ねぎ
自発的なイベントには目的に沿ってさえいれば、たくさんの人間が参加する。
そう、参加は自由だ。ただし、「どちらの陣営でも」と枕詞がつくけど。
僕は注目の的だった。理由はわかる。隣でにこにこと楽しげにしている温羅さんのせいだ。
そう、何故か僕はログインと同時に温羅さんに早期発見され、隣を歩かれているのだ。おまけに、温羅さんは堂々と森の中で、東西南北の主たちに協力し、異世界人を撃退する側に回ると宣言している。故に、他のプレイヤーは警戒して僕には近づいてこない。さらに、何故かナーガとサイガもプレイヤー撃退側らしい。
昨日、温羅さんに僕がボコられている間に色々あったんだなぁとしみじみ思う。ちなみにマサヤは今日は昼まで部活だ。
また、マサヤに怒られる事態にならなきゃいいけど。
「それじゃあ、テルア。わーはこれから森の中を駆け回らなあかんけぇの」
ようやく離れてくれるらしい。ほっと息を漏らしたのも束の間。爆弾発言をかましてくれた。
「おんしも気ぃつけるんじゃぞ? なにせ、おんしもポイントが高いからの」
「は?」
「ん? 気づいとらんかったんか? 雷神風神が持っとったポイント、そっくりそのままおんしが受け継いどる。倒されたら、ポイントはそのまま倒したもんに譲渡されるはずじゃ」
「はぁぁああああ!?」
なにそれ!? ちょっと待ってよ、それじゃあ僕が狙われるじゃん!!
「まぁ、おんしなら魔物組と一緒に行動するし、問題はない・・・」
「あの、温羅さん。今日は僕、ソロで動くつもりなんだけど」
温羅さんの表情が変化した。
「単独じゃと?それ、鴨がねぎ背負って歩いてるような意味になるんじゃが」
顔を見合わせる。
さすがに、僕も襲いかかられたら撃退するしかない。だけど、容赦なく撃退しまくったら、正当防衛とはいえ恨まれる可能性もある。それに、手練れに狙われたらさすがに危ないと思うし。
でも、臨時にパーティーに入れてくれるところなんて、心当たりが・・・。
「・・・・・・なら、俺たちとパーティーを組まないか?」
振り返ると、そこには昨日、僕と同じ予選にいた三人が立っていたのだった。




