247話 エクストラバトル 9
大威力の攻撃が来ることを予想はしていても、避ける術はなかった。故に、少しでもダメージが少ないところまで僕は反射的に移動していた。
さらに、無意識にそれで頭を防御していたから、HPがデッドゾーンに入ったがなんとか生き残った。
それでも、眼前に展開される光景に苦いものが込み上げる。
僕以外、全員HPを削り取られてしまった。距離があったはずのナーガでさえ、倒れている。
「やられたな」
ヒールで僕は自分の回復をする。
パチン。
風が吹き上がる。それによって、みんなの体がリング外へと運ばれる。
「優しいことじゃな」
「そっちこそ」
温羅さんがその気なら僕に攻撃をすることもできたはずだ。あえて、待っててくれたのは、温羅さんの好意か、それとも傲慢か。
「ちいっと、聞きたくてな。おんし、どこであんな動きを体得したんじゃ?」
「さて? どこだろね」
「喰えんやっちゃな。まぁ、勝つのはわーじゃが」
「あーうん。そうかもね」
僕はだらんと脱力した。
ここからは、一人。と、思ったら頭を噛まれた。あ、うん、ごめん。ミルカスレーグイ。いたもんね、君も。
「きっついなぁ、本当に」
「こっちも驚いてはおんじゃが。おんし傑物じゃわ。わーも怖いと思うくらいには」
「そう? ほめ言葉として受け取っとくよ」
僕は、笑う。ここからか。さぁ、我慢比べの始まりだ。
徐々に会場は静まっていく。それは、そうだろう。僕は温羅さんの攻撃を回避してるだけなのだから。
これは、期待してる観客には悪いと思うんだけどね。
避けてるだけとはいっても、一応狙いはある。
それにしても、熱い。
温羅さんはまた大太刀を熱している。一対一になったからこそ、その集中力は増している。
強いなぁ、本当に。徐々にHPが減っている。回復させても時間稼ぎにしかならない。
と、僕自身、半分くらい思ってる。気持ちで負けるなってよく言われるんだけと、正也からは逆のことを言われたことがあるのだ。
『冷静だとお前は怖い。切れさせるのも怖いんだけどな。お前、集中すると別人だよ、本当』
自分では、そこまで変わった気がしないから、不思議だ。ただ、時間の流れが遅くなったように感じる。
相手の動きの先がわかる。
それくらいだ。
でも、何故かみんなが驚く。
「おんしは本当に規格外じゃわ」
返事をする余裕はない。
「さっきのは使わんのか?」
そもそも、あれはクールタイムが結構長い。そうそうは使えないのだ。
だから。別の手段を講じるしかない。
パチン。
指鳴らしと同時に、発動する魔法。
「!? またか!」
幻惑魔法と光魔法により、引き起こされる、幻想世界。
たくさんのスライムがぽよんぽよんと跳ねている光景に、温羅さんはぽかんと口を開いたのだった。
次→9/2 19時




