246話 エクストラバトル 8
「ヤマト、いけそう?」
「いつでも!」
ヤマトの了承と共に、僕はタイミングを計る。チャップが温羅さんの動きを止め、それと共にナーガの弓がクリティカルヒットし、僕は合図を出した。
「今だよ」
パチンと指を鳴らすと、視界が一瞬で闇に覆われる。
装備の影響は半端じゃないらしい。
リングの半分を闇が覆ってしまった。
それは目眩まし。一瞬で視界が切り替わった場合、幾ら温羅さんでも対処できないという推測から。
闇の中で、自由自在に動くのはブラッドとチャップだ。
ブラッドは、元々暗視があるため、闇の中でも動ける。そして、闇の中で視界を確保できる闇魔法がある。闇魔法を習得しているのは魔物組の中ではあと二人いる。一人はチャップ、そしてもう一人は。
「・・・・・・・・・。」
ギリギリと弓矢が引き絞られ、連射される。
さすがナーガ。ここまで狙いが正確なNPCなんて、ほとんどいないんじゃないだろうか。スキルレベルがほとんどカンストしてるからもあるだろうが。何より、全身から放たれる烈帛の気迫が僕にビリビリと届く。
「でも、さすがにチャップでも、温羅さん相手じゃかなりきついか」
すぐに体勢を立て直す温羅さんに、僕は高速で頭を回転させる。温羅さんのHPは、実はあんまり減ってない。ようやく、一割といったところだ。このままでは、おそらくみんながどれだけ頑張っても、もって数分。ならば、それまでに打開策を打たなければならない。
僕が出ても、SP回復は完全じゃない。だから、まだ大技は使えない。
ーーー主。まだ?
「タイミングを計ってる。ナーガ、悪いけど、流星の準備しといて」
ナーガが、言われた通りにスキルの準備に入る。
チャップのHPが八割を切り、デッドゾーンに入った。サイガのHPも五割を切っている。ブラッドは、一撃離脱を繰り返しながら、なんとか追いすがろうとするが、チャップ並に減らされている。
まだ、あと少し。温羅さんが大きく大太刀を振りかぶった。
「ナーガ、ヤマト、ハイド!!」
僕の呼号に、ナーガが上空に流星のように矢を放ち、上空待機していたヤマトが急降下して、チャップにヒールを掛ける。同時に、その身を剣に変えた。チャップが剣を掴み、がら空きの胴に向けて薙ぐ。だが、それは温羅さんの腕によって阻まれる。傷はつけたが、ダメージは多くない。
そこに、サイガが背後から槍を突き刺そうとするが、回し蹴りで牽制されてしまう。
サイガは暗闇のなかでも相手の位置を臭いと触覚などで捉えているようだ。
ドドドドドドドッ。
そこにナーガが放った矢が流星のように降り注ぐ。
一撃一撃の威力は小さい。そのため、温羅さんは大太刀でサイガらを沈める方へとすぐにシフトした。
そこに。
ドガン!
「!? ぐっ」
潜ませていた『魔法大図鑑』を僕は温羅さんの頭目掛けて落とした。
クリティカル扱いにはならなかったけど、怯ませることはできた。
闇を造り出した本当の目的は、『魔法大図鑑』に気づかせないためだったのだ。
派手なナーガの攻撃に紛れさせた。幻惑魔法の使い手は僕だけじゃない。そして、幻惑魔法と相性の良い光魔法はヤマトが使える。僕の本命はこれだった。
「こうせつ・・・」
「深追いするな、全員、距離を取れ!!ハイド、引っ張れ!!」
隙と見てとった、チャップが剣撃を叩き込もうとするが、僕は許さなかった。
これくらいで、やられてくれるなら、苦労はしないのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ。今のは、効いたわ。つくづく、厄介じゃのう、おんし。礼代わりに、見せちゃるわ。手加減なしの、わーの一撃を」
大太刀を空へと投げる。宙に浮いた大太刀が、巨大化する。目を疑いたくなるような光景だ。それだけに収まらず、大太刀が青白い閃光を帯びる。
「雷火滅塵!!」
大太刀が、リング上に振るわれ、巨大すぎて逃げる術等なかった僕らはその巨大な雷撃を纏った一撃を浴びてしまうのだった。
次→ 22時




