表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/424

243話 エクストラバトル 5

「あー、やっぱりこんなもんか」

 ついつい、嘆息してしまうのは、闘技場の試合のレベルがあまりにも低すぎたからだ。こんなに低レベルでは話にならない。一方的な展開に、やられ役と称しても良いプレイヤー。だから。大蜘蛛がやられたのも当然だと、そう思ったのだが。

 その直後、リングの中央で変化があった。

「!? なんだ!?」

 リング中央に佇むプレイヤーから目がそらせなくなった。両腕から、黒い炎が吹き上がっている。

「なんだ、あれは・・・」

 その表情が凍りついている。腕とは逆に、その両足は金色の炎に包まれている。

 視界からプレイヤーが消えた。

 消えたとしか表現ができない。突如、温羅の背後に現れたプレイヤーが拳を振るう。

 その拳を受け止めた温羅の表情が痛みに歪む。何をした!? あのプレイヤーは一体・・・。

「・・・まさか、『魔光の王』」

 近くにいた誰かがぽつりとこぼした。誰が呟いたか、周囲を見渡してもわからない。わからないがしかし。もはや試合は一方的なものではなくなったことを、この時、観客の一人は悟ったのだった。


「なんじゃ、それは」

 ハイドが温羅に刺された後、テルアに異変が起きた。凍りついた表情の両目の奥では、憤怒の炎がたぎるかのようだ。

 すぐさま大太刀を抜いて迎撃体制を取るほどに、その変化は温羅にまずいものだと直感させた。

 そして、その直感は正しい。

 突如、視界から姿を消したテルアが現れたのは、温羅の背後だ。

 大太刀を振るう暇はなく、柄から手を離して、小さな拳を受け止めた。受け止めた手に痛みと痺れが走る。

 先程受けたシヴァの薬がまだ効いているとはいえ、温羅は肉弾戦に特化している。生半可な攻撃では、痛みを感じたりはしない。

 ぐぐっと拳を押し込まれそうになり、慌てて足をふんばり、相手の力を受け止めるが、テルアは温羅の体を足場に、受け止められた腕をつかんでいた肘に蹴りを叩き込んだ。

 思わず温羅は手を離してしまう。ぐぎっ、と肘から嫌な音が聞こえた。


「おんしは、おんしは何者なんじゃ!?」

「・・・・・・・・・。」

 テルアは答えない。

 怒りに燃えた瞳で、敵を見据えるだけだ。

「まさか、おんしは、他の神の眷属じゃったのか!?」

「どうでもいいだろ、そんなこと。ハイドにやった分の借りはきっちり返す」

「!!」

 テルアが、炎を纏ってからの動きは最初とはまるで違った。速さは格段に上がり、鋭さは比較するのも馬鹿馬鹿しいほどだ。遊んでいたわけではない。ただ、温羅は測り間違えていたのだ。テルアの力を。様子見していたのは、温羅だけではなく、テルアもだった。

 テルアの方も奥の手をまだ使っておらず、力を温存していたのだ。そして、温羅は唐突に思い出す。


 テルア・カイシ・クレスト(・・・・)


(最初から、名乗っておったんじゃな、おんしは)

 ここから海を渡った大陸に住まうクレスト神の名を、温羅は聞いたことがあった。

 クレスト神。それは、武神の名前だったはずだ。それを名乗ることを許されるとは、それだけの力を有するということ。

 なめていい相手ではない。

 身をもってそれを思い知った温羅も、大太刀に力を流す。大太刀の色が赤からオレンジ、白、青と変化する。


「わーも出し惜しみはせん。こいやぁああああ!!」

 温羅が試合が始まってから初めて本気になったのだった。


次→ 8/31 19時

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ