241話 エクストラバトル 4
すみません!遅れました。(´・ω・`)
油断してくれて助かった。でなくば、もっとてこずっていたかもしれない。
轟音が収まった時そこに佇んでいた影を見つけても、僕は驚かなかった。
予想していたからだ。ただし、ノーダメージとはいかなかったらしい。全体の一パーセント程は削れたみたいだけど。
「何をしたんじゃ!?」
温羅さんに問われても、僕には教える義理はないし、答える気もなかったから、適当に返事をする。
「さぁね。そんなに慌ててどうかしたの、温羅さん? まるで、死人と鉢合わせしたみたいだ」
「・・・・・・っ!! やってくれるのぅ。鬼術か。わーに効くなんて、どれだけ鬼術に長けとるんじゃ」
「別に。油断してたせいじゃないかな? 運が良かったんだよ」
僕の背中のミルカスレーグイが歯を剥き出しにして、笑う。
僕がやったことは単純だった。光魔法と幻惑魔法の同時使用によって、意図的に相手を幻想の世界へと叩き落とし、情報収集をした。それだけだ。
ただし、温羅さん級の相手だと、普通は失敗する確率の方が高い。
それを補ってくれたのが、ミルカスレーグイだ。
ミルカスレーグイは幸運の精霊であり、憑いていてくれると、それだけであり得ない程の幸運に見舞われる。
例えば、失敗するかもしれない幻惑魔法が、一発で成功するとかね。
ありがたいことだ、本当に。
基本的に格上相手はミルカスレーグイ憑きでが僕のスタンスだからね。
この程度で驚かれるなんて、本当になめられてるんだなぁ、僕たち。
そろそろ、本気で行こうか。
反撃は、相手が動揺しているうちにってね!
僕は手にした本で、温羅さんに殴りかかる。それを温羅さんは、片腕で、防ごうとする。だけど、いいのかな?
「ぐっ!? どうなっとる!? その本、一体なんじゃ!?」
「じいちゃんお手製本その一、『魔物大辞典』だけど?」
じいちゃんのサイン入りで、破壊不可の効果がかかっているこの本は、最強の鈍器かつ盾ともなる代物だ。こちとら、伊達にクレストのおじさんにしごかれてない。相手の軌道を見切り、カウンターで本を温羅さんに叩きつけようとするが、その前に蹴りが飛んでくる。
それを防いだ僕はニヤリと笑った。
今の温羅さんは、僕を一番危険と判断し、僕ばかりに気をとられてしまっている。けど、いいのかな? 他にもいるんだよ?
「剛旋槍っ!!」
「光刹斬!!」
サイガとチャップが背後からスキル攻撃を行う。
それらを捌き、凌いでみせる温羅さん。だけど、その頭上からタイミング良くシヴァの薬が落とされる。ヤマトとブラッドの仕業だ。
「!?」
捌ききったところで、サイガとチャップは下がるが、逆に僕は前に出る。
シヴァの薬を浴びた温羅さんの動きが鈍る。
そこに、僕は渾身の力で、本を振るった。
だが、それはかわされる。
ぎらりと、黄金色の瞳が僕を射抜く。
大太刀が抜かれた。
まずい!!
僕は咄嗟に大太刀の軌跡に本を差し出した。逃げ場はない。ならば、ダメージ覚悟で懐に飛び込むしかない!!
「ぐっ!?」
風圧だけで吹き飛ばされた。ごろごろと体を転がした僕の前に、降り下ろされようとしてる。
どん、と僕の体が突き飛ばされた。
僕の代わりに大太刀を受けたのは、黒岩のような巨躯。
「ハイド!!」
大太刀はハイドの体を貫いていたのだった。




