240話 エクストラバトル 3
最初に仕掛けたのは、一番敏捷が高い、ブラッドだった。ブラッドは、温羅さんの体に噛みつこうとするが、その攻撃を見切られ、伸ばした手に呆気なく首を捕まれてしまう。温羅さんがブラッドをぶん、と投げる。距離を詰めようとしていたサイガの方へと。サイガは最小限の動きで回避するが、体勢が不十分なままのサイガへと温羅さんが突っ込む。
「チッ」
舌打ちと共に後方へと下がろうとしたがそれは遅すぎた。胸へと掌底を打ち込まれてしまう。
肺から空気を押し出しながら、サイガが、吹っ飛ばされる。
掌底だけで、この威力とは。
やはり強い。
チャップが、隙をなんとかつくろうと、太刀を抜き猛攻を掛けるが、全て紙一重でかわされてしまう。
だん、とリングの床が踏み鳴らされた。リングがめくり上がり、石つぶてがチャップを打ちのめす。そこから、踵落としを首に決められ、チャップも倒れ伏す。
残るは僕と、シヴァ&ハイド、ヤマト、ナーガだ。ナーガの流星群のような長距離射撃が火を噴くが、
「狙いが正確じゃからこそ、予想は容易いもんじゃけん」
それらをかわし、あるいは両足、両腕で全てはたき落とす。
人間離れしている。
「さっきから、そこでおとなしゅうしとるが、なんぞ企んどるんかの? そうでなきゃ、これは、あまりにもお粗末すぎじゃ。期待外れというてもええくらいじゃ」
「言われなくても、わかってるよ。それでも、今はこうするしかないから」
「企みは、無駄に終わりそうじゃがの」
隠密で忍び寄ろうとしていたハイドとシヴァを拳だけで沈めると、ナーガに向かって矢を打ち返す。
それだけで、ナーガは場外へと吹っ飛んだ。恐るべきバカ力だ。
肉弾戦は得意だろうと予想していたが、そもそも地力が違いすぎたか。
だけど、その分、僕は温羅さんの攻撃をじっと観察することができた。
あぁ、でも、温羅さんをかなり怒らせてしまったみたいだ。それは、期待外れというよりも、僕が仲間がやられるのを黙ってみていたからだろう。
まぁ、それも計算のうちなんだけど。
多少冷静さを欠いてもらった方が、やりやすいこともあるのだ。
例えば、こんな風に。
「!?」
温羅さんが本気で驚いた。僕が突然眼前に現れたようなものだろう。
僕は手にしたそれで温羅さんの顔面を強打した。
結構、ダメージが入ったみたいだ。
不意打ち成功だね♪
「な、なんじゃあ、そりゃ!?」
思わず叫ぶ温羅さんは、動揺しまくってる。
ぱちんと指を鳴らすと、リングが一瞬で凍りついた。それに足をとられる温羅さんに、魔力を込めて威力を高めた一矢が、空中から放たれる。
「なっ!?」
どごぉぉおおおん、とリングの破砕音と、盛大な雄叫びが重なって、闘技場を震わせた。
次→22時




