235話 手出し厳禁
格好つけて割り込んだはいいけど、面倒なぐらいに人数が多い。巻き込まずにこの数をなんとかするんなら、ちょっと考えた方がいいかもしれない。
「一応、聞いとくけど、僕の忠告を聞き入れる気はある? ここでやめるなら、とりなしてもいいんだけど」
僕の問いに、攻撃の返答が返る。仕方ないな。
「じゃあ、悪いけど制圧させてもらうから。恨みはないけど、ごめんね?」
謝りつつ、僕が動こうとした直後、ビリビリとした怒号が場を支配した。
「何をやってやがるっ!!」
白銀の毛の狼の獣人が急いでこちらにやって来るところだった。
僕は、この町の責任者かな?と思ったんだけど、狼の獣人はずんずんと僕の側へとやって来て、ひょい、と首根っこをつかまれた。
あ、あれ? なんで?
「覚えのある臭いだと思ったら、やっぱりお前かよ。俺だよ、俺、サイガだ。忘れちまったのか?」
「サイガ? って、ああ! あのときの!」
そうそう、イベントクエストでお世話になったんだよね! あれからそんなに経ってないのに大分前に思える。
「ほら、さっさとこっちに来い。話聞いたシヴァたちが、全員暴れそうになってるから、止めてくれ」
「あー、だから、ナーガがさっきから思いきり矢を放ってたんだ。納得」
僕の言葉と同時に、流星群のように僕らを囲んでいたプレイヤーたちに矢が降り注いだのだった。
遅すぎたみたいだな、とサイガは乾いた笑いを浮かべたが、本番はここからだった。
隠密で隠れていたハイドが、まだ息のあるプレイヤーたちに容赦ない一撃で止めを刺し、チャップが投げナイフで遠距離のプレイヤーを潰していき、何故か体色が白になっているヤマトが鋭い嘴で、次々と残りを仕留めていった。
鮮やな手際で行われた虐殺は、短時間で終了した。
僕は特に口出しすることもなかったんだけど、みんなの表情を見て、何故か危機感を覚えた。
「師匠!!」
チャップが喜色満面のまま、僕へと歩み寄ってくる。
そのあまりの笑顔に、周囲が再び大きくざわめいた。
「主! 来てたのか。連絡くらいしてほしかったぜ!!」
ヤマトが僕の肩に留まる。
ーーーーーーおかえりなさい。
「ただいま、みんな。十日間、ほっといてごめんね」
照れくさくなりながらも、僕はみんなへただいまの挨拶がようやくできたのだった。
次→8/27 19時




