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230話 相手側は(※)

 その少年は、かなり目立っていた。なにせ、背中におかしな顔をした存在を張りつけているのだから、それも当たり前というものだ。

 短く切り揃えられた赤い髪に、琥珀の瞳を楽しげに煌めかせながら歩いているが、通り過ぎる際に異界人も鬼人も、誰もが振り返っている。それもそのはず。

 その少年は非常にかっこよかったのだ。

 顔の美醜ではなく、黒を基調とした服とそれに合わせたかのような装飾品という格好が、この上なく少年に似合っている。

 思わず鬼神である温羅さえもが目を留めてしまうほどには、その少年は存在感があった。


 他の異界人が顔をそらす中、その少年だけは逆に温羅と視線を合わせてきた。

 これには温羅も驚いたが、ふっと口許が綻んでしまう。

(わーが怖くないんか? 大物じゃのう)

 そのまま一言も発さずに、少年は温羅の側を通りすぎた。

 闘技場に向かっているらしい。

 じっとその背を見つめるが、少年が振り返ることはなかった。

 それをおもしろい、と温羅は思った。

 温羅は挑戦状を叩きつけられた気分だった。


 予選の時に、その少年と再会できたのは幸運だったが、外野がうるさく、温羅は外野を黙らせるためにわずかな時間、覇気を全開にした。リングの上にいるものは、一番幼そうな少女を除けば誰も動揺しない。胆の据わり方が違う。

 粒揃いじゃの、と温羅は内心感心する。それでも、一番気になるのは赤い髪の少年だが。


「そうじゃ、改めて自己紹介しとこうかいの。わーは、温羅。鬼神じゃ。わーと当たるやつは、それなりの覚悟で来てもらおうかいの。でないと、大怪我に繋がるからの」


 ここ最近では一番の笑みを浮かべていることだろう。温羅はリング上の四人に大きな変化がないことを確認して、さらに笑みを深めたのだった。




「・・・・・・・・・。」

 温羅が暴走しないように、見張りをしていた存在は、すぐに少年に気づいた。

 温羅ではなく、少年にばかり目がいってしまう。

 なにせ、十日ぶりなのだ。声を掛けたくてたまらないが、それをすると、少年にいらぬやっかみをするものがいるかもしれない。

 近くにいながら、声を掛けられないもどかしさにやきもきしながら、どう少年と接すれば穏便にいくか、思考するのだった。


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