表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/424

23話 イベントキャラ? (※ジャスティス視点)

「よくも、テルアたちに向かって攻撃魔法を放ってくれたのぅ。この借りは、高くつくぞ?」

 ジャスティスは、威圧を全開にしながら、魔法使いたちを見下ろした。闇色の瞳は、奥さえ見透かせない程の深淵を称えており、それに覗きこまれたプレイヤーたちは、恐怖に駆られて狂乱する。



「ひいっ! 来るな、来るなぁあああ!」

「きゃぁああああ! いやぁああああ!」

「こ、来ないでぇええええ!」

「すいませんすいませんすいませんもうしませんもうしませんもうしません」

 べそをかいたり、その場でへたりこんで泣き始めるものまでいる。

 しかし。

「許すわけないじゃろうが」

 無情にも、ジャスティスは宣言する。

「全員、骨の髄まで反省してもらいたいしの。儂だけならともかく、テルアにまで手を出したことは、儂には許せんのじゃよ」

 威圧されているために、逃げることさえもできない哀れな魔法使いたちに、魔神は笑顔を向けた。誰かが喉からひいっとひきつった叫びを上げる。



「や、やめください! 彼らは私に従っただけで、責任は全て私に・・・」

「誰が話すことを許可した、小娘」

 全てを言い終える前に、ジャスティスは冷徹な言葉と視線でリーダー格の魔法使いを黙らせる。だが、一旦口を閉じた魔法使いはなけなしの勇気をふりしぼって、リーダーたろうとした。

「話さなければ、彼らに危害を加えるのでしょう!? それなら、話さないわけにいかないじゃないですか!」

「立派じゃのう。本当に立派じゃ」

 ジャスティスは立派と連呼しながら、小馬鹿にした笑みを浮かべる。

「では、その立派なお主から最初に犠牲になってもらうとしよう。なーに、大丈夫じゃ。ちょっと別の場所に転移させて、死に戻りするだけじゃよ。運が良ければ生き残れるじゃろうて」

 転移魔法を使おうとしたジャスティスだったが。



 地響きがこちらに伝わってくるのを感じて、すぐに魔法使いたちに興味を失う。

 もちろん、威圧は保ったままだ。

「じいちゃーん!」

 地響きと共にやって来たのは、予想通り、ハイドに乗ってやってきたテルアたちだった。

 テルアは、ひらりと軽い身のこなしで、ハイドから飛び降りる。

「じいちゃーん!これ、返しに来たよ。これを返したら、この人たちも、もう襲いかかってこないだろうし。あ! ハイドはちゃんとジョブに就けたよ。ハイドらしいジョブの選択だった」

 手にした水晶を駆け足で冒険者ギルドに返しに行くテルア。その後ろ姿を見送ったジャスティス。すぐにテルアは冒険者ギルドから出てくる。

「中にいた人たちは、全員ヒールで怪我治しといたよ。すぐに目を覚ますと思う。それと、ユミアちゃん・・・あ、今日会う約束してた友人の妹がさ、魔法使いのジョブに就いてるんだって。あんまり他の魔法使いともめたくないと思うし、その辺りで許したげてくんない? お願い、じいちゃん!」

 テルアは両手をパンと合わせて、ジャスティスに頼み込む。

 ジャスティスは険しい表情をしばらく保っていたが。



「仕方ないのう。軽い呪いを掛けるだけで勘弁しといてやるわい。他ならぬ、テルアの頼みじゃしの」

 その顔から険が抜けて、やれやれと息を吐く姿は、どこにでもいそうな好好爺然としていた。

「ありがとう、じいちゃん!」

「・・・テルアに感謝するんじゃな、お前たち。さて、我、ここに敵対する者たちへ枷をはめん。「鈍重の呪い」」

 魔法使いたちは、体が一様に重くなったような錯覚を受けた。

「今回はそれだけで見逃してやるわい。どこへなりと、去ね。次に儂らに敵対すれば、完膚なきまでに叩き潰すからの。覚えておくことじゃ」



 ハイドの背に乗ったジャスティスたちが広場から完全に姿を消すまで、魔法使いたちは誰も動けなかった。ようやく動けるようになり、銀髪青眼の女性は、すぐに各自にステータス確認をさせる。

 そこには、ステータス表示の他に、こんな表記が追加されていた。



 状態異常:鈍重の呪い(敏捷を常に1割下げる呪い。効果時間、残り6日)



 呪い。そんな種類の魔法があることは聞いたことがあったが、それを使えるジョブに就いたと言う話は、聞いたことがない。

 これでも一応魔法使いギルド「レッツ」のギルドリーダーだ。

 魔法関連の情報は逐一チェックしている。だが、隠蔽された情報もあるのかもしれない。

 それでも、思わずにはいられなかった気持ちが口からついて出る。



「一体、なんなの、あの化け物(・・・)は」

 正直、敵対どころか二度とお目にかかりたくない。

「きっと、あのじいさん特殊なイベントキャラかなんかっすよ。んで、あっちの子どももきっとそうなんっすよ。そういうキャラってかなり強かったり、特殊な条件下じゃないと勝てなかったりするんすよねー。まぁ、今回は相手が悪かったと思って、忘れちゃっていいんじゃないっすかね?」

 サブギルドリーダーである青年が、彼女を慰めてくる。

「そうね。きっと、あなたの言う通りよね」

 ・・・・・・魔法使いギルド「レッツ」の面々は知らない。彼らが敵対した魔神ジャスティスはともかく、テルアはプレイヤーの一人であることを。

 彼らがそれを知るのは、もう少し後になってからのこと。

 「ゲテモノマスター」の二つ名が有名になってからのことである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ