221話 後始末で苦労するものたち(※)
すみません。外出る時にスマホ家に置いてきちゃいました。(´・ω・`)
「た、頼む! わーだけやと、ここら一帯更地になってしまうけぇ!」
「ダメです。きちんと、一人で元通りにしてください」
チャップが冷めた視線で温羅を見上げる。
「いや、人間、いや、人間やなくて、わーは、鬼神やけども! あのな、鬼神じゃからゆーて、やれることとやれんことがあるけぇ、な?」
温羅は、必死だった。それはそうだ。朝から、地形を元通りにしようと、頑張っていたのだが、結果は巨大なクレーターが出来上がっており、とても直る見込みはない。あまりにも腕力が強すぎるために、やればやるほど地面に穴が開いていき、最終的には温羅がチャップに泣きついた。
「そうですか。どうしてもできないというなら、仕方ありません。わかりました。これをどうぞ」
そっとチャップが差し出したのは、温羅が怯む物体だった。
「な、なぁ? わーの目が確かなら、これ、借用書て書いてあるんじゃけども。しかも、ゼロが七つついとるけぇ」
「ええ。迷惑料と慰謝料とを込みにしてますから。サインしていただければ、別にもうなにも言いませんよ?」
笑顔のチャップに、温羅は背に寒気が走る。
チャップは種族が悪魔兵なのだ。相手の弱味につけこむのが得意な一族でもある。そのため、たとえ鬼神といえどもチャップの提案をはねのけることはできず。絶望的な表情をしながら、泣く泣く温羅は借用書にサインしたのだった。
ご利用、ありがとうございますとほくほく顔のチャップに、温羅は虚ろな目を向けたのだった。
同時刻。酒呑はというと。
「おにいちゃーん、こっちだよ、温泉!」
「ここで泳ぐのー!」
「たーのしー!」
鬼人はの子鬼たちになつかれて、気づけば拠点の案内をしてもらっていた。十数人の子鬼たちが楽しげに案内してくれる。自分にびくつかない子鬼たちに、酒呑の心は温かくなる。純粋に、笑顔のみを向けられたのは一体何年ぶりだろうか。
酒呑は気づかなかったが子鬼たちを見るその眼差しはとても優しいものだった。
こんな風に笑う酒呑は、生きていた頃はきっとあり得なかっただろう。
もはや、死んだ身ではあるが、それでも。
酒呑は今ここにいられる幸運に、心底感謝するのだった。
さて、管理者として居残ったチャップ以外の、魔物組は森の北に探険に出ていた。当たり前だ。ようやく森の北の探索ができるとあらば、喜んで出発するのは当然だろう。彼らが特に注目したのは、鉱石系のアイテムだった。鉄やら、ミスリル、青鋼、赤鋼、黄鋼、紫鋼、緑鋼、茶鋼、といった特殊な鉱石系のアイテムの入手ができるのだ。
鉱石系のアイテムに目を輝かせたのは、ヤマトだ。ヤマトは光物が大好きなので、たくさん入手できてご機嫌である。
そして、彼らがたくさんの鉱石系アイテムを入手し、拠点に帰ろうとしたところで、事件は起きた。
ひゅん、ひゅん。
風切り音と共に、鉄製のブーメランが魔物組を襲撃した。
すぐさま臨戦態勢に入る魔物組。
森の北は手つかずのままであったので、他の場所より多くの戦闘が発生した。それはいいのだが、こんなパターンは初めてだった。
「あー、やっぱり避けられちゃった」
「そりゃあな。強いのは初めからわかってただろ?」
樹上から降りてくる二つの影に、魔物組はいつでも攻撃できるよう、照準を合わせるのだった。




