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203話 イベント一日目の夜 12 (※多数視点)

 防犯木像に下敷きにされた二人は呻きながらも、防犯木像の下から這い出そうとするが、防犯木像がそれを許さない。

 では、鬼術で怯ませようと明石が両手を上に向けると、驚くべきことが起きた。

 鬼術が発動しなかったのだ。こんなことは初めてで、明石が動揺すると、邪悪な顔立ちの人型の魔物があっさりと説明する。


「すみません。その木像、防犯なだけあって、触れた相手からSPを吸い取る仕様でして。ほら、魔法とか使われると厄介じゃないですか」


「ものすっごく、面倒かつ高性能ですね!? そんなもの、ほいほいと放置しないでください!」


 明石の抗議に困りながらも人型魔物は反論する。


「あ、いえ。放置はしてません。それに、その木像も別に大したことのない素材でできてるんです。多少物理には強いだけで魔法を使われればひとたまりもないんです・・・本来は」


「本来は? ちょっと待っとくれ。それじゃあ今はどうなんだい?」

 さっと顔をそらされ、何かあることを匂わせる人型魔物。


 ーーー今はねー、破壊困難と再生機能を付け足したから、魔素があるところでは半永久的に動けるし、さっきよりも破壊されにくくなってるよー。魔法でも。


 ナメクジが口を出す。吸血蝙蝠はうんうんと頷き、大蜘蛛はそ知らぬ顔・・・いや、退屈になったのか、自分の鋼糸を使って、服を作っている。


 自由すぎる面々に、鉄斎は面白そうに口の端を歪めて笑っているが、他の鬼人の三名はあきれたり、怒ったりしている。

「いい、加減、どけやぁああああああ!」

 獅子南が渾身の力で、木像の下から抜け出す。そして、さすがに堪忍袋の緒が切れたのか、太刀を抜き放ち、木像に向けた。

「潰す潰す潰す潰す潰す・・・」

 物騒なことを呟きながら、木像を睨み付ける獅子南を制したのは、鈴音だった。


「やめときな。無駄な体力を消耗しちまうだけさ。あたしらは戦いに来たんじゃないんだからねぇ」

「姐さん! 止めないでくれ、これは男の沽券に関わることなんだ!」

 獅子南は鼻息も荒く、木像に斬りかかろうとし。

 ヒュン。

 飛んできた矢に手を貫かれて、太刀を手放すことになった。


「まーだ隠し玉がおったのか。まったく、どこまで戦力を上げれば気が済むんじゃ、お主らは」

 鉄斎の視線の先には、高い建物しかない。その建物から放ったのだとしたら、とんでもない腕前だった。飛来速度も凄まじく、獅子南が気づいたときにはもう矢は獅子南に突き刺さっていた。

 鉄斎でさえ、回避は難しいだろう、遠距離からの射撃。


ーーー大丈夫!? ヤマト、回復!


 ナメクジが獅子南の、手の怪我を見て、すぐに白カラスに指示を出す。白カラスは仕方ないとばかりに、獅子南を回復させる。


「はぁ。今のはうちの獅子南が悪かったね。先に得物を抜いちゃ、あたしらが危険だといってるようなもんだ」

「すみません。こちらも、少々軽率でした」

 鈴音のため息に、チャップを始め、他の魔物たちも全てが頭を下げた。

「お詫びといってはなんですが、今宴会の最中なのです。そこで一献どうですか?」

「酒宴か! そりゃいい! 酒は大好物だぜ!」

 痛みと不意打ちにぶつくさ言っていた獅子南の機嫌が途端に直る。

 鬼人は、うわばみが多い。さらに一族は大の酒好きだ。酒宴の誘いを断るなどあり得なかった。

「そうと決まりゃあ、案内してくれよ! ほら、早く!!」

 獅子南が魔物組をせかす。鈴音も口では文句を言いつつも、嬉しげだった。


 三人が魔物組の後についていく中で。


「ちょ!? 私のことを忘れないでください〜〜〜〜〜っ」


 未だ木像に乗っかかられたままの明石が助けを求めるのだった。


次→ 8/7 19時

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