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200話 イベント一日目の夜  9 (※多数視点)

祝! 200話です!(  ̄▽ ̄)/ よく続いたなぁここまで。作者が一番感慨深いです。

(*´ω`*)

「鉄斎のじいさん、いるかい?」

 夜もそろそろ更けようかという時に、集物所にやって来た鈴音は挨拶もなしに、鉄斎を呼んだ。

 集物所の奥から、すぐに鉄斎が顔を出す。


「どうしたんじゃ? こんな時に鈴音が儂のところに来るなぞ、明日は雨かの?」


「まったく、あたし相手でも全然態度を変えないじいさんだね。ま、そこが鉄斎のじいさんのいいところなんだろうけど」


 やれやれと呆れた顔をしながらも特に気分を害したわけではない。鉄斎がこういう性格だというのは、幼い頃から鉄斎と付き合ってきた鈴音にとっては今更だった。だからこそ、鈴音は鉄斎のことを信用して、夫がいない間は頼りにしているのだ。


「鉄斎のじいさん。ちょっとついてきてほしいところがあるんだ。この近くに見慣れぬ魔物が住み着いたらしい」

「ん? ひょっとして、人型の魔物かの?」

「知ってたのかい!? どうしてあたしに知らせてくれなかったんだ! そいつらのせいで、明石と獅子南がひどい目に遭ったって、本人たちから聞いたんだ。危険な魔物ならば放置しておけやしない」


 鉄斎は、無言で鈴音に薬瓶を差し出した。

 訝しく思いながらも鈴音は素直に受けとる。じっと薬瓶を見ていた鈴音の表情が驚きに彩られていく。


「これは、薬かい? それも、子どもでも、飲みやすいよう、味が調節してあるじゃないか」

「誰がそれを持ってきて、儂に売ったと思う?」

「? 誰だい?」

「おそらく、お前が言っとる魔物だ」


 鈴音の手から薬瓶が落ちそうになる。


「嘘だろう? 魔物が薬を売りに来たって言うのかい!?」

「あ」

 その言葉に反応して獅子南の口から声が漏れた。ぎっと睨んでくる鈴音に恐れおののきながらも、獅子南はぼそぼそと話した。


「あ、いや。そういえば、そいつら、宴会してて。それで、その中の魔物がお酒をつくったとか言ってたような・・・」

「それって、つまり、その魔物たちには知能があるってことかい!?」

「少なくとも、儂が会った魔物はこちらの言葉をきちんと理解しておったし、むやみに力を振りかざすような感じでもなかったわい」


 鈴音は混乱した。そんな話は見たことも聞いたこともない。だが、鉄斎の言葉に触発された獅子南と明石は思い出す。

 自分達の出会った魔物たちは、こちらの意思を汲んで話していたことを。


「そうだ。言われてみれば、危険とかあんまり感じなかった」

「確かに命の危険は感じませんでしたね。威嚇以上のことはしてきませんでしたし、少なくとも、命をとろうとまではしてこなかった」

「どういうことだい? 魔物が本当にそんなことを・・・?」


 鈴音の心に迷いが生じる。わけがわからないと切って捨てるには、気になりすぎる情報だ。

 もしも鈴音が秋菜と六花の話を聞いていればこれほど迷うことはなかっただろう。だが、実際は鈴音に情報はいっておらず、現実の立体像が掴めない状況に陥っていた。

 無意識の内に鈴音は懐から扇を出して、閉じたり開いたりしてしまう。


「そんなに気になるなら、行ってみればいいじゃろう。百聞は一見に如かずとは、よく言うたものじゃぞ?」

「そう、だね。それしかないね」

 心が決まった鈴音は、村の近くに住みついたらしい魔物を必ず見極めなければと、気合いを入れ直したのだった。




次→ 8/4 21時

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