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198話 イベント一日目の夜 7 (※多数視点)

「なあ、明石。俺ら、なんでこんなことになってんだ?」

「私に聞かないでください、獅子南。こっちが聞きたいぐらいなんですから」


 横に座っている明石につい、訊ねてしまう獅子南。それに不機嫌そうに明石が答える。今現在、二人を縛り付けていた糸は切られており、一応動ける状態にはなっていた。だが、見慣れぬ魔物らに囲まれており、思わずため息が出てくる。

 魔物はコウモリやら、ナメクジやら、この辺りではあまり見かけない魔物ばかりだ。どこからかながれてきたのかもしれない。

 

「それとよぉ、この不気味な木像、見てるだけで気が滅入るんだが。しかも、目がギョロギョロ動いてるし、逃げようとしたら邪魔されっし。なにより、夜見るとこぇえし」

「それ、まったく今の状況に関係ないですよね!? まぁ、同感ですけどね!?」

 二人が座ってるすぐ横では、目玉がそこかしこについた、不気味としか形容できない木像があった。

 それが邪魔してくるのだから、さすがに嫌な気分になる。だが、それよりも問題は。


「だーかーら、俺とサイガが一番だって! この建物、俺とサイガで造ったんだし!」

「俺はほとんどやってないんだが・・・」


 ーーーーーーそんなの、二人で組んだんだから、早く出来るのは当然だよ! それよりもシヴァの作った、お酒の方がすごいでしょ!? 酔っぱらえるんだし、味もいいし! 発酵させるの、大変なんだよ!


 ーーーーーー僕とハイド合作の、警戒網もすごいよ? ちゃんと、使えるってわかったし。


「私が作った、不審者見張り用の木像はどうですか? これでもかなり頑張ったんですが・・・」

 チャップが明石や獅子南の側に置いてある木像を示した。


「あぁ、なるほど。悪魔が作ったら、そりゃ、見た目も不気味になるわ」

「言ってる場合ですか。とにかく、脱出しないと、長も待ってるんですから」

「とりあえず、話しかけてみるか」


 こそこそ相談するものの、この木像が邪魔してくるのでなかなか突破できないのだ。と、いうか木像が自動的に動くってなんでだ。

 つっこみ気質の正也がいたら、確実に息切れを起こすほどつっこんだだろう。


「あの、すみません。いいですか?」

 明石が話しかけると、すぐにサイガが反応した。

 他の者は、言い争いを続けている。


「ん? あぁ、捕らえて悪かったな。こいつらはこんな状態だから、勝手に逃げてくれていいぞ」


「ずいぶんと適当ですね!? それなら最初から捕らえないでくださいっ」


「まぁなぁ。言いたいことはよくわかんだけど、全員酔っぱらってるからな。あ、でも気をつけろよ。その木像、気に入ったら勝手に付いてくるらしいから」


「こんなのについてこられるなんて、嫌がらせ以外の何物でもないんですが!?」


「文句は制作者に言ってやってくれ。あ、あと。それ、物理攻撃効きにくいらしいから、頑張れ」

 悪いと言いながらもまったく悪びれずにサイガは自分の席に戻った。明石と獅子南は顔を見合わせる。

 ひとまず、獅子南が木像に太刀を叩き込んでみるが、手にはぐにゃりとした感覚が返ってきた。


「俺の攻撃の衝撃を吸収しやがったぞ、こいつ。明石、お前、鬼術使えるか?」

「使えないことはないですが・・・」

「じゃあ、とりあえず鬼術で怯ませてから、逃げるか」


 堂々とそんなことを言っている辺り、いい加減、彼らも適当になりつつある。なんとか、木像を鬼人に伝わる術で怯ませて逃げたが、その後、警戒網に引っ掛かった彼らは、ヤマトたちに追いかけ回される羽目になり、命からがら村へと逃げ込んだのだった。




「・・・・・・遅い」

 呻くように嘆いたのは、白髪紅目、頭からは黒い円錐状の角を二本生やした鬼人。

 名は有楽月(うらつ)。この島にある、鬼人族の村、おにーちゃんよってって村の若長である。

 だが、彼は今らしくもなく困惑していた。

 薬と、大祓えの豆が切れそうだったので、仲間に村まで取りに行ってもらつているのだが、もうかれこれ一刻(二時間)程になる。


 これは何かあったのかと心配しているのだが、さりとて、スレイたちを放置するのも気が引けるし、勝手に動いてしまっては、いざ帰ってきたときに仲間が困るだろう。

 どうしたものかと悩んでいると、スレイがずばり聞いてきた。


「ずいぶんと仲間の帰りが遅いな。こちらはもう、全員目を覚ましているが」

「あぁ。すまねぇな。あいつら、どこかで道草でも食ってるのかねぇ?」

「いやー、鬼の兄さんには、えらい迷惑かけてもうたみたいで。まぁ、全員無事にいられたんは兄さんのお陰やな。ありがとうさん」


 ほりっくわーかーが、頭を下げながら、お礼を言う。

 有楽月は、苦笑しながらも、まだ帰ってこない仲間の身を案じる。

 スレイは、有楽月の態度にすぐに出発準備を整えるよう、仲間に指示を出した。


「有楽月。助けてもらったこと、本当に感謝する。今度は俺たちが有楽月の手助けをする番だ」

「は? スレイ、お前さんら何を・・・」

「あー、やっぱり、隊長は隊長だ。僕ら、寄り道してたら、目的果たせないんだけどなぁ」


 カカシは何かを納得したような、諦観したような、複雑な表情をした。


「まぁ、いいじゃない、カカシちゃん! あたしら、どっちにしろ村に一旦戻るつもりだったし!」


「さすがに、助けてもらった恩人を見捨てるような真似はしたくないわね」


「俺は兄貴についてくぜ!」


「お前さんら・・・」


 有楽月は、予想外の温かな言葉に面食らったが、ついクスリと笑みをこぼした。


「あぁ、そうだな。俺はここを離れらんねぇ。お前さんらに俺の仲間への伝言を頼んでいいかい? それと、村にいる俺の女房に宛てて手紙を書く。それを女房に見せてくれりゃあ便宜を図ってくれるはずだ」

 その後、有楽月は仲間である明石と獅子南二人の特徴を教えて、スレイたちに伝言を頼み、さらに村の自分の女房に宛てて書いた手紙をスレイたちに持たせた。

 スレイたちは、有楽月と別れ一路村を目指すのだった。

 




次→ 8/2 21時

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