196話 イベント一日目の夜 5 (※多数視点)
あ、間違えてすぐに投稿にしてしまった。
(°Д°)
スレイの次に起きたカカシは、不機嫌だった。一瞥して状況がわからず、少々痛む体を引きずりながら、自分たちのリーダーのところへと行く。
「隊長、誰と話してるんですか?」
丁寧な言葉遣いの中に混じる、不審げな響き。有楽月は、少しだけ目を細めた。
「あぁ、カカシ、起きたのか。こっちは有楽月さんだ。俺たちを助けてくれたらしい」
助けてもらえなければ、そのままアールサンの街に死に戻りしていたことは間違いない。経験からそれがわかってるスレイは素直に話を信じたのだが、カカシは納得できなかった。あまりにタイミングが良すぎるのだ。出来すぎだと疑う気持ちを持ってしまったカカシは有楽月をついつい胡散臭そうに見てしまう。
「へえ? 俺を疑ってる目だ。まぁ、気持ちはわかる。だけど、表に出すべき感情じゃあないわな。まずは助けてもらったことに対する礼が先だろう? お前さんのおとっさんやおかっさんは、そんなことも教えてくれやしなかったのかい?」
「カカシ。気持ちはどうあれ、俺たちは助けられた立場だ。有楽月の言うことが正しいだろう」
小馬鹿にしたような言い方にカチンと来るカカシだが、スレイに咎められて、唇を引き結ぶと、深々と頭を下げた。
「助けて頂き、ありがとうございました。・・・・・・はぁ」
最後に嘆息したカカシは、ふと自分の装飾品がないことに気づく。慌てて、ステータスを確認し、愕然とした。
装飾品や、道具が合わせてかなりの数なくなっている。
再び嘆息するカカシに、スレイが不思議に思い訊ねた。
「どうした、カカシ?」
「道具と装飾品がなくなってる。隊長も確認してみて」
スレイが確認すると、確かに幾つかの装飾品や道具がなくなっている。
「あぁ、それか。多少礼金代わりに抜かせてもらった。俺たちも、タダで人を助けるほどお人好しじゃあ、ねぇんで」
有楽月の言葉に、カカシは恨めしげに有楽月を睨んだが、有楽月からはにやにやとした笑いしか引き出せなかった。
「その装飾品は、買い戻すことも出来るか?」
「ほぅ、切り換えが早いな。ま、今なら実物が手元にあるんでね。交渉は受け付けるが、買い戻すかい?」
「あぁ。せめて、リバルの指輪と、ハンナの腕輪は買い戻したい」
スレイは、なくなっていた腕輪と指輪のことが密かに気になっていた。それらはステータスこそあまり上がらないものの、魔法威力軽減と、身代りの機能がある代物だ。かなりの高値がつくために、買い取るにしてもかなりの痛手なのは承知していたが、できればイベント中は身に付けておきたい筆頭の装飾品だった。
「そうさな。二つ合わせて・・・五十万、といったところかい」
五十万ならば適正価格だ。スレイは渋ることなく、有楽月にお金を支払う。
この有楽月は、装飾品やアイテムは勝手に取っていったものの、お金は手付かずだったのだ。
それだけでも、全財産を巻き上げようとしたわけではないことがわかる。助けてもらっておいて、謝礼を要求しないのは、裕福な者だけだ。そんな生ぬるいことをするほど、お人好しでもないという言葉は、有楽月の心からの言葉だろう。
謝礼を要求されるのが当然だ、と捉えたスレイはやはり大物だった。
カラカラと、有楽月は笑う。
「あはははははははは! スレイ。お前さん、その年で世渡り上手みてぇだ。いいだろう、気に入った。少しばかり、おまけしてやるかね」
有楽月は懐から紙の包みを取りだし、それを装飾品と一緒に渡してきた。
「これは?」
「大祓えの豆だ。そいつは特別製で、ここら一帯に沸いた鬼に対して、ダメージを与えられる。森の主も例外じゃあねぇ。また、森の主に挑戦するんだろう? あると、便利だから、持ってきな」
有楽月の言葉に、スレイも少し頬を緩めた。
「・・・・・・感謝する。カカシ、お前は何か買い戻したいものはないのか」
「え、あ、でも・・・」
「イベント中に、死に戻りでステータスダウンを喰らわなかったことだけでも、十分意味があるだろう。どうする?」
有楽月は適正価格を示した。ならば、少しは信用してもいいだろう。
そう判断したカカシは頭を最初に下げた。
「さっきは、失礼なことをしてしまって、すみませんでした。つい、警戒してしまって」
「いやいや。謝る必要はねぇよ。いきなり見知らぬ鬼が側にいたら、そりゃ俺だって驚くだろうさ。お前さんの考え方も間違いじゃねぇ。その上で少しは俺らのことを信用してもらえたなら、良かったわな。それで、何を買い戻すんだい?」
取引は無事に終わり、その後、他のパーティーメンバーが目覚めるまで、三人は他愛ない話で盛り上がったのだった。
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