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191話 継承

 白い大カラスは、優しげな目をしていた。側にいるだけで、誰もを安心させるような、そんな懐の広さを感じた。


「長!」

 

 一番最初に助けた大カラスが叫んだ。


「おお。みな無事じゃったか。ほっほっほっ。良かったわい」


 どうやら、この白い大カラスが、ヤマトたちが助けた大カラスたちのリーダーのようだった。無事でなによりだ。

 大カラスたちが喜ぶなか、サイガだけは険しい表情を崩さなかった。

 何かを確かめるように、じっと白い大カラスを凝視する。


 白い大カラスはそれに気づきながらもあえて何も言わなかった。


「大事な仲間を助けてくれたのは、お前さんらかの? ありがとう、この老いぼれもおかげで助かったわい」

「気にしなくていいよー。シヴァとしても、薬の効能確かめたかったし」

「長! またみんなで森で暮らしましょう! みんなが長のことを待ってます!」


 大カラスが、白い大カラスに意気揚々と告げるが、白い大カラスは首を横に振った。


「それはできん。すまんが、もう、長にはなれん。儂は、死んでしもうとるからの。ただ、この場に留まった未練がお主らに話をしてるだけに過ぎんのじゃよ」

「え?」

「どういうことだ? じいさん、あんたは・・・・・・」


 ヤマトがかすれた声音を出す。白の大カラスはどこか悲しそうに微笑んだ。


「儂はもう、生きとらんのじゃよ。大カラスたちをまとめるのは無理じゃ。じゃからの、待っておったんじゃ。儂の眼鏡にかなうものを。間に合わぬかとも思ったが、世の中ようできとる。こうして、巡り会えたわい」

 白い大カラスは、まっすぐにヤマトを見つめていた。その視線はとても強く、しかし儚く繊細な願いが込められているように、ヤマトには感じられた。


「のぅ、お若いのや。同族のよしみとして、儂の頼みを一つ聞いてくれんか。儂の後を継いで、こやつらを導いてほしいのじゃ。儂の代わりに、こやつらを助けてくれた、お主が一番相応しいわい」

「ちょ、待ってくれ、じいさん!俺は生まれたばかりで、こいつらを元に戻せたのもシヴァの薬のおかげで・・・」

 ヤマトが慌てて言い募るが、白い大カラスは断固として宣言した。


「いや。儂の代わりが務まるのは、お主以外にはおらんよ。大変だと知りつつも、助けてくれたお主ならば、みなが信じるはずじゃ。頼む、無茶な願いとは重々承知しておる。それでも、引き受けてはくれんか」

 長が地面に頭をこすりつける。

「長・・・。あの! 私からも、お願いします! どうか、私たちの長になってください! この通りです!」

 続いて一番最初に助けた大カラスも続いた。

「お願いします!」

 唱和と共に、他の大カラスたちも頭を下げる。

「わかった」

 ここまでされて、頼みを断れる程にヤマトは冷酷ではなかった。渋々頷くヤマトに、白い大カラスから安堵の息が漏れる。

「良かった。本当に・・・では、お主に、儂の力と記憶を引き渡そう!」

 言葉と共に白い大カラスは、再び光の塊となって、ヤマトの中へと飛び込んだ。

 その瞬間、眩い光が周囲を照らした。

 光が収まると、ヤマトの体色は、白へと変化していた。


「みなを、よろしく」


 最後に白い大カラスの声がヤマトの口から出た。

 ヤマトはわけもなく無性に泣きたい気分になる。


「あぁ、任せろ。俺が、きっちりと率いてやるよ」 


 もう聞こえない白い大カラスの声に、ヤマトは答えていたのだった。



 このあと、ヤマトはイベント終了までの間、大カラス団を従えることとなったのだった。




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