190話 巨鬼退治 5 (※多数視点)
狂戦士化状態解除に伴い、巨鬼のステータスは下がっていた。
魔物たちの狙いはただ一つ。
残った足を狙う。
その一点に、全員が攻撃を集中させた。
ナーガが時と共に込められる限界ギリギリまで込めた魔力の矢は巨鬼の足に見事命中し、その肉を抉る。
肉を抉った場所に、正確にサイガが豪槍旋を放ち、巨鬼は堪らず膝をついた。
その時を今か今かと待ち構えていたハイドによる八連撃が決まり、さらに巨鬼を追い詰める。
ハイドのつけた傷をなぞるように、炎蓮で光刹斬を放ったチャップは、さらに返す太刀で一撃を入れる。
シヴァは、巨鬼の移動力が落ちたのを見計らい、エクストラポーションを巨鬼の傷口にたっぷりと振りかけた。
巨鬼の口から苦鳴の声が上がる。
巨鬼は気づかなかった。
自分のダメージに目を向けすぎて、主要メンバーの一体が自分の知覚する範囲内にいないことを。
ハイドと、チャップは巨鬼の腕を巻き込みながら、巨鬼をぐるぐる巻きにしていく。
「これで、どうだぁ!!」
地上より、およそ二千メートルの上空からヤマトは自分のスキル武器変化を発動させた。
ヤマトの姿が、巨大なギロチンの刃と化し、勢いよく落ちていく。巨鬼の姿は見えないが問題はない。
ヤマトが目的地まで迷うことは、けしてないのだから。
巨鬼は、自分の動きを封じられて、鋼糸を振りほどこうと必死になっていたために、気づくのが遅れた。
そして、気づいたときには手遅れだった。空から落ちてきた巨大なギロチンの刃は、巨鬼の首を切り落とした。
首を失った巨鬼の巨躯がゆっくりと地面に倒れる。
ギロチンが、ヤマトに戻る。
他の討伐メンバーも、大きく息を吐いた。最後の攻勢で、全員SPは半分を割っていた。
危ないところもあったが、勝利したのだ。
全員が安堵しかけ、サイガのビリビリとした声がその緩みをまた引き締め直した。
「まだだ! 油断するな!」
はっと巨鬼の方を見遣ると、巨鬼の体が淡く光っていた。
全員が再び臨戦態勢をとる。
だが、戦闘にはならなかった。
「ありがとのぅ、お若いのら。おかげでようやく解放されたわい」
巨鬼の体の光が集束すると。そこには白くした大カラスの一羽がちょこんといたのだった。
次→21時(予定)




