188話 巨鬼退治 3(※多数視点)
巨鬼は、かつてないダメージを受けていた。片足は使えなくなり、両目は塞がれ、敵からの攻撃を防ぐことは困難となり、一方的になぶられ続けることに、かつてない怒りを覚える。
怒りと昂りは時と共に高まる一方であり、それらが最高潮に達した時、巨鬼に異変が起きた。
ぐるぅぉぉおあああああ!!
巨鬼が吼えた。
そして。巨鬼に刻まれていた浅い傷の数々が超回復していく。両目と足は回復しなかったが。それだけではない。
巨鬼の腕が太く、強靭なる肉体はその強さを誇示するかのように、金色に変色した。
「出やがった! 狂戦士化状態だ! 全員、距離を取れ!!」
サイガの指示に、地上、空中にいた全員が素早く距離を取った。
そして、巨鬼の体から衝撃波が放たれる。
距離を取っても、その衝撃波の威力はすごかった。
「回避を最優先に行いながら、各自ぽーちょんで回復! 衝撃波が収まったら、俺の弓矢による遠距離攻撃を軸に魔法攻撃で奴の生命力を削る!」
ナーガが風魔法で指示を飛ばす。その通り動こうとした大カラスたちの眼前に、巨躯が出現した。
誰もの反応が遅れた。
元々、身体能力の高かった巨鬼だが、その巨鬼を以てしても、届かない位置に舞い上がっていたのに、狂戦士化状態の巨鬼は、易々とその距離を跳んでみせたのだ。
巨鬼の口が開かれる。その奥に、風の流れを感じた。
あれを放たれるのはまずいと感じても、止める手段が・・・。
その時、ヤマトの火魔法が発動した。 巨鬼の口の中へと放たれる大きな火球。
さらに、ブラッドが衝撃波に傷つきながらも特攻し、巨鬼の耳許で最大威力の超音波を放った。
それにより、わずかばかり、巨鬼の体が傾ぐ。
それが、全員の命を救うこととなった。
巨鬼の口から放たれたのは、限界まで圧縮された空気の塊。直撃すれば、ハイドでも一撃で沈んでしまう威力を秘めた、必殺技だ。
その軌道がそれたために、奇跡的にかろうじて死者は出なかった。だが、空気の塊が飛ぶ時にその軌道の近くにいた大カラスたちは力尽きたように、バタバタと地面へと落ちていく。
「ここからが本番てか。このデカブツが」
吐き捨てながら、ナーガは弓を構えるのだった。
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