186話 巨鬼退治 1 (※多数視点)
それは、森の東の覇者だった。巨鬼と呼ばれ、この時期だけ、森の八方に潜む森の主の一体だ。強靭な肉体と、無尽蔵とも思われる体力、そして地上にいてはけして相手に悟られない、隠密能力。
まさに、森の主の一体と呼ばれるに相応しい。
巨鬼は、主に地中に潜んでいるが、出てくることもある。
いつ、出てくるか。
獲物を捕まえ損ねた時もあるが、巨鬼には苦手なものがあった。それが、水だ。水に濡れてしまうと、地中に潜むことが困難になってしまう。
その弱点を利用して、今、攻勢を仕掛けようとしている者たちがいた。
巨鬼は現在、地中に潜んでいた。
今日は、あまり巨鬼にとっていい日ではなかった。
小さく、素早い小物が色々とちょっかいを掛けてきたのだ。最初は相手にしていなかったのだが、途中で妙に気が昂って、小物を追いかけ回したりもしてしまった。途中で邪鬼がいたので、もちろんおいしく頂いたが。
その間に、小物は姿を消してしまった。
巨鬼にとって、捉えきれない速さではなかったのだが、動きが不規則で、予測が困難だったのだ。
次に会うときは、きっちりと食べるつもりだが。
そんなことを考えていたためにか、巨鬼は異変に気づくのが遅れた。
ザァアアアア。
巨鬼の苦手な水が上から降り注いだ。
巨鬼は、仕方なしに地中から姿を現す。
その瞬間、巨鬼に向かって一条の光の矢と、さらに上から降ってきた何かに、両目を貫かれる。
ぎぃぃいぅぁぁああああん!
痛みに声を上げる巨鬼に対して、たくさんの水が掛けられた。
途端、巨鬼はまた昂りを覚える。
だが、両目を潰された巨鬼は、本能のどこかでまずいと感じ取っていた。
次→7/26 19時
 




