177話 イベントの参加者たち 10 (※多数視点)
(これは、驚いたのう。鑑定しておる限り、全て品質に問題はないようじゃ。いや、良品を問題ないというのはちと語弊があるかの)
薬にも、基準というものがある。下から順に、最悪、不良、普通、良品、最高となっている。人型の魔物が持ってきた薬は全て普通よりも上の良品。報酬もその分上乗せされるのが当たり前な品だ。
(しかも、全てぽーちょんじゃ。ぽーちょんは、子ども向けの味付けがされとるから、大人でも子どもでも飲みやすい。これらを買い取れば村の家々にそれぞれ予備として在庫が置ける。何か流行り病があったときなども、子どもが嫌がらずに飲む薬は、あった方がええじゃろう。じゃが、さすがにこれだけの量を買い取るとなれば、ちと財布が心許ないのぅ。ふむ。交渉してみるか)
「これらの品は、普通のものよりもちと品質が良いようじゃ。じゃが、これだけの量となると、買い取るにしても、値段は下がるが、それでも良いかの?」
「構いません。そもそも、本人は作りすぎた余り物だからと言ってましたし」
(余り物、のぅ。これだけあれば、ちょっとした財産くらいにはなるんじゃが。一体どんな薬師なんじゃ?)
気になるが、まずは薬の交渉をした方がいい。
鉄斎は、ざっと値段を付けて、提示した。その値段から、東の森に関する情報料を抜いても、かなりの金額になったので、鉄斎は奥に引っ込み、とある特別な物を出してきた。
「すまんが、これを見てくれんかの」
「? これは、武器ですか?」
「そうじゃ。名を、鬼切りの太刀、炎蓮というんじゃがな。この太刀は、鬼に対しての攻撃力が爆発的に上がる代物なんじゃ。お主が持つ剣では、東の鬼に挑むにはちと心許ないじゃろう。これを買っていきなされ。お前さんの役に立つはずじゃ」
「なぜ、私に?」
「言ったじゃろう? この太刀は、鬼に対しての攻撃力が上がる。鬼人に対しても攻撃力が上がってしまうんじゃよ。そんな物を村の中の誰かに持たせてしまったら、恐怖の対象となるかもしれんじゃろう? だから、余所者に売るのが一番なんじゃよ。お主ならば使いこなせるということもあるがの」
「手に取ってみても?」
構わん、と許可を得て、チャップは太刀を鞘から抜き放った。
抜き放った瞬間、チャップは刀身に魅入った。内側は淡い、珊瑚の色合いをしているが、外側にいくにつれ、色が濃くなっていく。その美しさに、感嘆のため息を漏らさずにはいられなかった。
「おいくらですか?」
「そうじゃのう。こちらもさっきはちと買い叩いておるし。これくらいでどうじゃ?」
老人の示した金額は、チャップ自身の手持ちだけでは足りない金額だった。
チャップは、考えて、自分のアイテム袋をひっくり返した。
ひくり、と翁の頬が引きつる。
「この素材に値段を付けてもらえますか? それと手持ちのお金を合わせて、支払いますから」
多分足りるだろうと思ったチャップだったが、言われた鉄斎は半分耳に入ってなかった。
あまりにも、様々な魔物の素材が出てきたもので、頭の中のそろばんが大変なことになっていたからだ。
「時間をもらいたい。頑張って鑑定するでな」
鉄斎は珍しく、心からのため息を吐いたのだった。
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