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172話 イベントの参加者たち 5 (※多数視点)

 ※ここからは魔物言語翻訳済みでお送りします。


「ちっ。こっちの声も聞けない状態になってやがる!」

 舌打ちしながら、ヤマトは寒気がするような容貌の三つ頭カラスと対峙する。

「どういうこと? 知り合い?」

「・・・・・・同族だ。ただし、闇に呑まれた、な」


 苦い色の混じった声で、答えるヤマト。ヤマトの住んでいた地域に突如沸き起こった瘴気の影響で、同族の魔物たちは次々にその姿を変えてしまった。

 その時、ヤマトは卵の状態だったが、周囲の音は聞こえていた。そのヤマトも、卵のまま瘴気を受けた。本当ならば、ヤマトも目前の魔物のように姿を変えるはずだった。


 そうならなかったのは、主であるテルアのおかげだ。気づけば、未熟な能力を使って、主の手に収まった。

 そして、生まれたのだ。主の手の中で。

 その瞬間、体にまとわりついていた、瘴気が綺麗に消え去った。

 主は、とても呆れていたけど、主に出会えたことで、ヤマトは助かったのだ。

 だから、こんな風に苦しんでる同族に出会ったヤマトは、胸に刺が突き刺さったようだった。


「助けられないのか? 俺には・・・!

 主がいれば、助けられるのに。

「ヤマト! 前!」

 同じく空を飛べるブラッドが叫んだ。 気づくと、眼前に鋭い嘴が迫っていた。なんとかそれを回避して、ヤマトは体勢を整える。

「っ。ちくしょう!」

 悔しさを力にしながら、ヤマトは眼前の敵に集中する。

 同族として出会えれば、もっとうまくやれたのかもしれない。

 聞こえる。苦しんでいる声が。

 だから。

 ヤマトは、翼を広げた。今は、戦闘中だ。倒すしか、相手に救いの道がないのであれば、やるしかない。

「行くぜ・・・!」

 さすがに空中戦ができないブラッド以外の魔物は、下でずっと戦況を見守っている。


 速さに任せて、突っ込んでくる三つ頭カラスに、同じくヤマトも自分の持てる限りの速さで迎え撃つ。一瞬の交錯。


 地上に落ちていくのは、三つ頭カラスの方だった。

 地上に降りたヤマトは、なんとも悲しげな視線を、倒したカラスに注ぐ。それに気づかぬほど、他の魔物たちも鈍感ではない。

「ねぇ、ねぇ、ヤマト。この子と知り合い?」

「いや、知り合いじゃないけど、同族だから」

 ブラッドの問いに、どこか苦しげに告白するヤマト。それを見ていたシヴァが、ハイドの上から飛び降りた。

「なんか、状態異常に掛かってるみたいだね。うーん、新作の薬試してみていい?」

 シヴァの言葉に誰もが、えっ!?と驚きを見せる。

「ちょうど、試したい薬がたくさんなの! いいでしょ?」

 止める前に、シヴァが、薬を三つ頭カラスに振りかける。


 三つ頭カラスの頭が苦しみ、カラスもしばらく苦しんでいたが、黒いもやが、カラスの体から抜けていき。

 苦しむ声がやんだとき、そこにはひとつ頭のカラスの姿があったのだった。



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