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169話 イベントの参加者たち 3 (※多数視点)

「ひとまずは、リーダー?」

 カカシの意味ありげな目配せに、スレイはよくわからないながらも従った。

「!! あんなところにレア物の剣が落ちている!」

 大抵の者はスレイの(真面目に聞こえる)声と指差された方向を条件反射で見てしまうものだ。

 案の定、引っ掛かった者が多かった。


「村の中心まで走って!」


 その隙を逃さずに、カカシの指示に従ってスレイたちは囲まれていた人垣を突破し、森の中ではなく、村の中心へと駆けた。こう見えて、スレイたちのパーティーは高レベルなプレイヤーの集まりであり、敏捷もそれぞれ高いメンバーだった。一部の者が追いかけてきたが、村の中心まで来ると、誰も追いかけてこなくなった。

 ふう、とメンバーらが息を吐く。

「それで、カカシ。どういうことなんだ、これは? なんで、俺たちが他プレイヤーに囲まれる事態になったか、説明してくれ」

「あー、説明したいのは山々なんだけど。ここじゃ話せないから、場所移動しない?」

 カカシは困ったように自分の後ろの建物を示した。

 そこには、看板が出ており、「お食事のみもできます。宿屋・明喜」と書かれていた。宿屋というだけあって、村のどの建物よりもその宿屋は大きかった。他の者が訝しい表情をする中、宿屋の扉が開き、中から妖艶な鬼女が現れた。


「おや。なかなかの男前だね。うちの宿屋に泊まっていってくれるのかい? うちは、女性だけしか働いてないから、そこの美人と泊まってもなんの問題もないよ」


 その瞬間、スレイの危機察知のスキルが凄まじい勢いで警報を発した。

 この女に関わるのはまずいと感じ、スレイは平静を装いながら、口実をつけて女の誘いを断る。


「いや。魅力的なお誘いだが、俺たちは遊びに来たわけじゃない。すまないが、この村に冒険者ギルドはあるだろうか?」

 くすり、と女が笑みを浮かべて、白魚のような指をすいっと動かした。


「それなら、あっちにあるよ。ま、名前はちょいと違うがね。気が向いたら、うちの店にも来とくれ。サービスするから」

「そうだな。考えておく」


 短い会話のやりとりを、冷や冷やしながら、カカシは見守っていたが、スレイが宿泊を断ったことにほっと安堵の息をこぼす。

 その瞬間、気づく。鬼女が自分を観察していたことに。

 内心冷や汗をかきながら、その視線から逃れるように顔を背けた。


(ふーん。なるほど。そろそろ異界人の方でも噂になってるみたいだねぇ。情報収集しているやつもいるようだ)


 心中で呟きながら、女将は艶然と微笑んで、宿屋に戻ろうとした。

「あぁ、待ってくれ。名前を聞いておいていいか?」

 そのスレイの一言に足を止める。名前を聞かれたのは、これで五人目(・・・)だ。

 女将が名乗るのは自分が認めた相手のみと決めている。高い自尊心と矜持が、半端者に名乗ることを許さないからだ。


「そんじょそこらのやつには名乗らない主義なんだが。まぁ、いいさ。あたしの名前は鈴音(すずね)だ」


 鈴音は五人目となる異界人の若者に名乗った。それを聞き、スレイの方も頭を低くしながら、自己紹介する。


「紅蓮騎士団のリーダー、スレイだ。しばらくはこの村を拠点にするつもりでいる。また、何かあったらよろしくしてもらいたい」

「まぁ、気が向いたらね。あぁ、そうだ。あんたたち、みたとこ空中戦は不得意そうだね。それなら、東には行かないことをお勧めするよ」

「? どういうことだ?」

「東は、なかなか厄介な魔物の生息地でね。ま、話が聞きたいなら、集物所で聞いとくれ」


 言うだけ言って、鈴音は宿屋に戻った。途端、静けさが戻ってくる。

「とにかく、集物所に行っちゃおっか!どうも、理由を知ってるみたいなカカシちゃん? じっくりと話をきかせてもらうからね?」

 集物所に着いたカカシは、身ぐるみをはがされる「明喜」のことを話したのだった。


次→7/16 19時

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