168 イベントの参加者たち 2 (※多数視点)
「やはり出遅れたのは少しイベントには痛かったか?」
「いや、仕方ないんじゃない、リーダー? そもそも平日の朝十時に仕事してなかったり、学校行ってない時点でヤバイと僕は思うし」
紅蓮騎士団のトップであるスレイの問いに、No2のカカシが答える。
時刻は午後の六時半。場所は始まりの街アールサンの広場だ。彼らは、イベントに参加する気満々であり、パーティーを組むために、時間と場所を決めて今回集まることになっていた。
「それより、リーダーこそ、勉強大丈夫なの? 確か学生だったでしょ?」
「問題はない。まぁ、あまり遅くまでゲームをやると親に怒られるが、これでも勉学は怠らずにきたほうだからな。部活がない分を勉強に回せばいいだけの話だ」
何でもないことのように言うスレイ。
全国で、赤点の学生が聞いたらかなり恨まれそうな台詞だ。だが、まぁ本人が大丈夫だと言ってるのだし、スレイは生真面目な性格なので、勉強にも手を抜きまくるということはないだろうと、判断する。
「待たせちゃって、ごっめぇええん! スレイちゃん、カカシちゃん!」
頭に響くキンキンした高い声にスレイとカカシが振り返ると、そこにきゅるっとした大きな猫目が特徴的な、猫の獣人がいた。装備は身軽な物であり、俊敏そうな動きがいかにも得意そうだ。手にはナックルをはめている。
頭の上の猫耳がピョコピョコと揺れる彼女の名前はモッキー。素手での格闘戦を得意とするプレイヤーだった。
「モッキー。あれ?カルラさんは?」
「青銀の魔女」の異名をとる女魔法使いの名前を出すと。
「ちょっと用事で遅れそうなんだって。さっき連絡来てた」
何でもないことのように、モッキーはカルラの動向を答えた。実はモッキーは現実世界でカルラと知り合いであり、その付き合いは結構古いのだ。
なので、遅れる場合なんかもモッキーに頼むことがカルラは多い。
「すんません! 遅れました!」
走ってスレイたちのすぐ側までやって来たのは、青髪に銀の瞳をしたプレイヤーだった。顔立ちはそれほどでもないし、体躯も一見ひょろひょろしてるみたいに見えるが、それは彼が自分を鍛えているからだった。彼は、尖兵役として抜擢されたプレイヤーだった。
プレイヤー名、ミキ・ナラス。
職業は盗賊である。それ故、手癖が悪いのがたまに傷だ。
「待たせてもーて、えらいすんまへんなぁ。もう、みんな集まっとったんやな」
「遅くなって、御免なさい」
僧侶服を着たプレイヤー、ほりっくわーかーが、気負いなく現れた。さらにその後ろにはカルラもいる。
「全メンバー集まったね。リーダーは誰にする?」
「当然、スレイで」
全員の意見が一致し、スレイがパーティーリーダーになった。パーティーを素早くメニューで組むと、カカシがセーブポイントの大水晶に触れる。
「ひとまず、さっさと転移しちゃおうか。あと、村についてしばらくは宿屋に案内されそうになったら断ってね。断らないと、身ぐるみはがされて裸で放り出されるなら」
さりげないカカシの忠告に、全員の目が点になるが、説明は後でするからと押しきられた。
ひとまず、全員がうなずいたのを確認してから、カカシは選択肢のはいを選んだ。途端、視界が変わる。
着いた途端、スレイたちは多数のプレイヤーに囲まれて懇願され始めた。
「頼む! あの女をこてんぱんにのしてくれ!」
「じゃねぇとやってられねえよ!」
次々と訴えてくるプレイヤーに、カカシ以外の者は目を白黒させる。
カカシは頭が痛いとばかりに額に手を当てて、空を仰ぐのだった。
次→8/15 19時




