165話 村から追い出された(^_^;) (※多数視点)
村に到着して、早々。魔物組は村人の鬼人に村から出ていけと追いかけ回された。
着いて早々のことで、戦うよりも全員が逃げに徹しようと意見が一致したからだ。
そして、今。魔物組は村から少し離れた広場に陣取っていた。
これからどうするか、話し合いを始める。
まずは、この広場を拠点とすることを決め、次にこの島がどうなっているのか、魔物の分布はどうなっているのかを調査することになった。
拠点とはいえ、何もない場所だ。そのため、なにか目印になりそうなものを作っていくことにした。
適当な木をチャップが光刹斬で、切断し、シヴァが持ち歩いてる薬品で地面を柔らかにして、そこに丸太を差し込んだ。その上から今度は地面を硬くする薬品を撒いて丸太を固定する。それを繰り返すこと五回。それらの上にハイドが大きな布を被せながら、鋼糸で丸太に固定していく。
あっという間にハイドも入れる簡易テントの出来上がりだ。荷物を置くのは少し不用心なので、全員きっちりもっていく。
ーーーーーーそれじゃ、まずは、どこから行く?
シヴァの問い掛けに、真っ先に答えたのはヤマトだった。
「かぁ!(東からにしないか? そうすれば南、西、北と時計回りに探っていけるぜ)」
「それはいいですね、わかりやすくて。ヤマト殿がいれば、私たちも迷子になることはないでしょうし」
「ギィッ!(賛成)」
ーーーそれじゃ、ここから東の調査に行こうか。ヤマト、案内よろしく。みんな、背中に乗って。
特にもめずに、魔物組は動き出す。
これは、魔神ジャスティスの教育の賜物だったりする。
危険な場所は、危機察知スキルが働くので事前に回避しやすく、ヤマトがいれば、どこにいても迷うことはない。
ならば、行く指針だけをさっさと決めた方が、時間を無駄にせずに済むはずだ、とテルアがいない時に言われていたのだ。
魔物組は素直にそれに、従ったのである。
なまじ、事前情報がほとんどなかったために、特に迷わずに済んだという面もある。
もしも、南に出る魔物が薬石という素材を落とすと聞いていれば、シヴァは南に行きたがっただろうし、北にある洞窟には蝙蝠魔物がいると聞けば、ブラッドが行きたがっただろう。
だが、現実それらを魔物組に教える情報提供者はいないのだ。
故に誰からの文句も出ず、彼らは東に向かった。
ドガッ。ガッ。
探索し始めてから、一応子供くらいの大きさの鬼の魔物、邪鬼が度々出現してはハイドに群がってくるのだが。
ハイドの体重を掛けた一撃になす術なく次々撃沈していく。素早いものは、ハイドに取りついてくるが、
「邪魔です」
チャップの投げナイフが体に突き刺さると悲鳴も上げずに落ちていく。そしてハイドにきっちりと止めを刺されていた。
ーーーーーー意外と、この辺りの魔物は弱いね。あんまり薬の出番がないよ。
「かぁっ!かぁ、かぁ! (多分、村に近いせいもあるんだろう。村から離れれば離れるほど、強いヤツが出てくんのかもしれねぇな)」
「注意と警戒は怠らない方がいいでしょうね。エリアが変わると、いきなり魔物が強くなるという話を師匠から聞いたことがあります」
チャップのその一言で、緩みかけていた緊張感が再び少し戻ってくる。
「ギィッ、キイッ!(とりあえず、進もう! 何かあったら、その時に考えればいいよ!)」
ブラッドのその一言で、再び進み始める魔物組。
しばらく進むと、ヤマトが空の上へと舞い上がった。
ハイドも止まっている。この先から、水の音がするのだ。
「かぁ、かかぁ!(川がある!)」
「川ですか。明らかに、なにか起こりそうですね」
ーーーイベントかな? 準備を整えてから、行った方が良さそうだね。
「キィィイイイ!(伏せて!)」
ブラッドの鋭い叫び声に、全員が従った。
ブラッドが超音波を最大出力で発する。
上空から飛んできていたものは、ブラッドの超音波で目測を誤り、方向を見失って近くの木に激突する。
「!?」
その魔物の姿に、全員が硬直した。
その魔物は、三本の脚を持っていた。
ヤマトによく似たカラスの姿をしているが、決定的に違うのは、そのカラスには三つの頭がついていたことだ。
一つは普通のカラスの頭だが、残り二つは、向かって右が憤怒の形相をした鬼の顔、左は鼻を削ぎ落とされ、唇も焼かれた跡がある、虚ろな女性の顔だった。
「かぁ!?」
ヤマトが呼び掛けるが、その魔物は何も答えない。ばさりと翼を広げ空へと舞い上がると、再び魔物組に襲いかかってきたのだった。
三つ頭カラスが現れた!
次→7/12 19時




