158話 小噺 大いなる野望? 2 (※多数視点)
「すっごいなぁ。羽、かちかちだー」
ブラッドは、地面に突き刺さった羽をツンツンとつついてみた。柔らかそうな見た目とは裏腹に、ヤマトの羽は硬いのだ。それこそ、鍛えればハイドに迫るのではないだろうか。
ブラッドの頭の中に、飛翔爆弾という文字が浮かび上がったが、口にはしなかった。
「あー、まぁ、相手もかなり硬いんでな。飛び道具で差をつけられないか、やってたんだよ。ぜってぇあいつには負けたくねぇ」
ヤマトの瞳がぎらりと光る。きっとヤマトにとってはあの小鬼の像がライバルなのだろう。
「そもそもあいつ、目障りなんだよ。主に呪いをかけようとしやがるし。そのくせ、主の側に隙あらば行こうとしやがるし。いい加減にしとけって話だ」
そこで、ブラッドとハイドはヤマトが何故小鬼の像を敵視するのか、わかった。要するに、ヤマトも主のことが大好きなんだなと改めて実感する。
「この羽、素材としていいね。少しもらっていい?」
ハイドは、地面に突き刺さった羽に興味津々だ。
「ん? 素材? 何かつくんのか? ってか、そういや改めて自己紹介してなかったな。ヤタガラスのヤマトだ。特技は道案内だな。よろしく」
簡単な自己紹介と共に、ヤマトがペコリと頭を下げる。
「僕は、吸血蝙蝠のブラッド。特技は人や魔物に似合うアクセサリーや服を見繕うことだね」
「黒岩大蜘蛛のハイド。特技は縫製。主に似合う服を作るのが最近の趣味よ」
「おう、よろしく」
口調こそ少し乱暴な感じだが、ヤマトは意外にも礼儀正しかった。そこから、三体は話に花を咲かせる。
「あ、そうだ! ヤマト、この羽、くれない? 黒いから、ワンポイントにしたり、繋げたらアクセサリーにできると思うの!」
ハイドが紅い目をキラキラさせながら、おねだりすると、ヤマトは快く了承してくれた。ただし、ヤマトもハイドにおねだりをした。
「そりゃいいんだけど。羽を渡す代わりに、俺でも装備できる服みたいなのを作ってもらえねぇか? 主の服も、ハイド作なんだろ?」
「ええ、いいわよ! 素材は鋼糸になるけど。どんな感じにしたいの?」
「その、だな。えっと」
少しつっかえながらも、ヤマトが口にした服の要望に、ブラッドとハイドは思わず笑ってしまった。
ヤマトの要望は、主の肩に留まった時に、主をさらに引き立たせるような服だった。
それなら、むしろ服にこだわらない方がいいと、ブラッドが進言する。
「ヤマトの場合、服だと、少しダサい感じになりそうだから、スカーフにしてみたら? 脚にはリボンみたいなのを巻いたら、かっこいいんじゃないかな」
「脚にリボン、か。リボンは、飛ぶときに邪魔になりそうだな」
「そうよね。自由自在に操れるなら、むしろ中距離の武器として扱えそうだけど。そんなのできるのは、錬金術師くらいよね」
「・・・・・・錬金術師? なんだ、それ」
ハイドとブラッドは顔を見合わせた。そういえば、自分達は最低限の知識として魔神ジャスティスに、座学を習っていたが、ヤマトはまったく座学をやっていない。知識が少ないのは致し方ないことだといえる。
「錬金術師っていうのはね・・・」
二人の説明を聞いているうちに、ヤマトの目は少し見開かれ、次いでキラキラし始める。
「いいな、錬金術師! 俺、職業それにする!」
ブラッドとハイドはええ?となった。別にわざわざ生産職にしなくても、ヤマトの場合、戦闘特化にしても構わないと思うのだが。
「だって、金属も扱えるんだろ? だったら、主に自作のアクセサリーを装備してもらうこともできそうだし!」
目から鱗が落ちる思いだった。その発想はなかった。
元々、カラスというのは光り物が大好きで、ヤマトもその例にもれない。故に、キラキラしたものや光り物はヤマトの得意とするところだ。スキルにはないが、そういうものを見つけるのも、案外得意である。
それから、どうやったら職業に就けるのか、期待に満ちた眼差しで生き生きと質問してくるヤマトに、ブラッドとハイドは丁寧に自分たちの知識を教えていったのだった。
次→7/5 19時




