157話 小噺 大いなる野望? 1 (※多数視点)
吸血蝙蝠のブラッドには、大きな野望があった。その野望のために、現在必死に勉強中なのだが。なかなか、うまくいかない。いや、うまくいかせたいのだが、それには幾つもの課題をクリアーしなければならないのだ。
さて、その野望とは。
可愛い雌の吸血蝙蝠にモテモテになることと、自身のブランドを立ち上げ、有名になることだ。
元々、吸血蝙蝠という種族全体では、ブラッドのような目立ちたがり屋は珍しい。だが、ブラッドは誰よりも目立ち、影ではなく光の中に行くことが、“夢”だ。本来、日光が苦手なのは、自身がきちんと自覚している。だからこそ憧れるのだ。
夢を叶えるための努力を惜しまないが、望みとしては、主にブランドのモデルになってもらいたいとは思っている。主は、その気はなさそうだが、ブラッドは確実にモデルとして売り出せると睨んでいるのだ。いや、違う。
ブラッド自身が自身の喜びも追求しつつ、主に喜んでもらいたいのだ。
ブラッド、すごいねと言ってもらいたい。誰に言われるよりも、主に言われた方が嬉しいから。
だからこそ、山のように出された課題に必死に取り組む。いずれブランドを立ち上げるなら、なるべくインパクトのある服を掲げたい。
ただ、自分だけでデザインをつくることはまだできない。そのため、今日もブラッドはハイドの元へと相談に行くのだ。
(※ 以下から、魔物言語を翻訳した形でお送りします)
「ハイドー!」
「ブラッド? どうかしたの?」
「僕の立ち上げるブランドの服、一緒に考えてくれない!?」
ブラッドの言葉に、ハイドは糸で縫い合わせをしていた足を止めた。
「また? あんまりブランド物とかよくわからないんだけど」
「とにかく、主に似合いそうな斬新な服!」
ハイドのリクエストに、ハイドの目がキラーンと光った。
「了解! どんなのがいい!? どれも似合いそうで、逆に迷う!」
「スーツもいいし、主だったら民族衣装系も似合いそうだよね! 他にも武神様の服をアレンジしたのとか! あ、装飾品はどうしよう!? シンプルなのもいいけど、じゃらじゃらと鎖や指輪で華やかに演出っていうのも、いいんじゃないかな!?」
「金も銀も似合いそう! あぁ目に浮かぶわ。色々な服のデザインが・・・そのためには、まずは素材集めが重要ね」
「うんうん!」
ハイドとブラッドが盛り上がってると、轟音が響いた。慌ててそちらに様子を見に行くと。そこにはたくさんの羽根が地面に刺さっていた。
「ちっ、こんだけの威力しか出ないなんてな。これじゃ、奴にはまだ確実には勝てねぇか」
舌打ちと共に空から舞い降りてきたのは、ヤマトだった。ヤマトは、ブラッドとハイドに目を留めると、ん?となり、次いで自分の羽が刺さってる地面とハイドとブラッドを交互に見遣り。
「悪い、巻き込んだか?」
少し恐れを含む声音で、聞いてきたのだった。




