150話 おしおき
セルト神が目覚めると、そこはよくわからない場所だった。
ここはどこだろうかという疑問に答えるものはいない。
不意に、パチリと音がして、辺りが明るくなる。
そして、辺りの光景にセルト神は唖然とする他なかった。
なぜなら、そこは。
「広間?」
疑問は、その場に吸い込まれていく。
その広間のような場所は、他にも人がいた。人というか、神だが。
「よぅ、セルト。久々だな」
声を掛けてきたのは、セルトが苦手とする、武神だった。
「お前には、今からここで、裸踊りの取得をしてもらう!」
とてもいい笑顔で言いきった武神クレストの言葉に、目が点となる。
「・・・は?」
「だから、裸踊りだよ。今からお前にやってもらうの。んで、俺らはそれを野次る」
「なんだ、それは! 私をバカにしてるのか!?」
「あぁ、そりゃもちろん。バカにしてるぜ?」
セルト神の激昂を涼しい顔で受け流す武神クレスト。ただし、至って真面目な面持ちで頷く。
「ロード神から話聞いて、俺も驚いたんだけどな。俺の眷属に手を出してくれたらしいな? それも、死ぬ寸前までいたぶるとか。許すわけにはいかねぇな。本当なら、ぶち殺してぇくらいだ」
暗い瞳で告げてくる武神は、おそらく本気だ。本気で、セルト神をいたぶりたがっている。
「ってわけで、まずはその服を全て無理矢理剥ぎ取らせてもらう」
「!!」
セルト神は武神クレストの前にいることができず、思わず逃げ出した。それが予定調和の逃走だったとも知らず。
「逃げても、どこまでも追いかけてやる。覚悟するんだな」
武神クレストの言葉が心底恐ろしかった。
足を必死に動かしながら、セルト神はこの状況から逃げようとするが。
「どもー♪ 逃がさないって、セルト。あきらめて、オイラたちの前で裸踊りやれば?」
「!!」
再び逃げ出すセルト神の背中から、太陽神ロードはその背に蹴りを見舞った。
「逃げ切るなんて無理無理。このときのために、他にも二人呼んでるんだから」
ロード神の言葉が不吉に響く。それでも逃げるしかない、セルト神だった。
さらに、次に会ったのはクク神、最後に会ったのは、魔神ジャスティスだった。気づけば、出会った神全てに取り囲まれ、肉体的に痛めつけられ、精神的にはクク神の魔法によって、裸踊りをやらされて誇りがズタズタになった。
だが、四柱は容赦がなかった。
裸踊りをしたセルト神の映像を、天上界で流し、セルト神を晒し者にした。
そこまでされて、ようやくセルト神は解放されたのだ。
セルト神の目はもはや虚ろで、生きた屍状態だった。
以降、セルト神はけしてテルア・カイシ・クレストに関わろうとはしなくなったのである。




