149話 顛末(※多数視点)
テルアがログアウトした後。ダークエルフの村に残っていたティティベル神とロード神は、セルト神の処遇について話し合っていた。と、いっても、すぐに決まったのだが。
「セルトがテルアをいじめてた!って、ククとクレストと魔神に連絡入れてみる」
「え"」
思わず呻き声に近い声が、ティティベル神の口から漏れ出てしまう。
それは、さすがに可哀想だと思う面々だ。
ただでさえ、ロード神にぼこぼこにされてる中、ロード神と同等以上の力を持つ神々を集めると言うのだ。哀れに思わないはずがない。
そこで、ティティベル神は気づいた。ロードの笑みが、いつもと種類が違うことに。
「ロード。実はまだ怒ってるわね」
「当たり前だって、ティティベル姉!オイラ、すっごく腸煮えくり返ってるから!」
笑顔が怖い。笑顔の裏に、般若が隠れていることを疑えない。いや、だからこそ、ロード神はわざわざセルト神が大事にしている虹色鋼を取り上げたのだろう。大事なものを奪うことで、報復してるのだ。
「聞きたいんだけど。なんで、そこまで人間一人に入れ込むの?」
「あれ? ティティベル姉には、来てないのか、手紙!」
「手紙?」
「神様の一人一人に宛てた手紙だよ。届いてないのか?」
「来てないけど?」
あれ、おかしいなぁと、首を捻るロード神。その様子に苛立ち、ティティベル神がその手紙を見せてくれるように頼むと、ロード神は断った。
「悪いけど、こいつはティティベル姉にも、見せられないよ! だって、オイラの大事な物だからね!」
興味を湧かせておいてこの態度だ。腹が立つが、ひとまず、やるべきなのはセルト神のことだ。
「セルト神のことが片付いたら、後で、絶対に手紙を見せなさいよ」
「それは無理! だって、この手紙はある意味手紙じゃないから!」
わけのわからないことを言う弟に嘆息し、ティティベル神はセルト神を背負ったその弟と一緒に転移をするのだった。
「えっと、唄魔法の本はどこでしたっけ」
ごそごそと本棚を漁る、仮面を付けた青年。その青年は、空気のざわめきを感じて、顔を上げた。ざわめきが起きてる中心を、じっと見つめていると、空間が揺らぎ、二人の人影が姿を現す。
「あなたがここに来られるなど珍しいですね。ティティベル神」
「来たくて来たわけじゃないわ。自分の居城の方が落ち着くもの。だけど、この弟を放置すると絶対に目的地に着くまでに遠回りするだろうから、送ってきただけよ」
「よ、クク! 顔合わすの、久しぶりだな!」
一人=迷子決定をされているティティベル神の弟神は、こんな夜だというのにとても、元気だった。
「珍しいことは立て続けに起きるものですね。それで、私に何の用ですか?」
「あ、クク。これさ、どうやってお仕置きすればいいと思う? ククの意見聞かせてくれよ」
そう言って、太陽神ロードが背中から降ろしたのを見て、仮面の下でクク神は眉をひそめた。
「セルト神? 一体、何が・・・」
「こいつ、よりにもよってテルアに手ぇ出してさ。それで、ここに連れてきたんだけど」
途端、クク神の雰囲気が鋭く重いものへと変わる。
「魔法の真髄を学ぶ同志に手を出したと。それは、万死に値しますね」
「だろ?」
「それじゃ、私はこれで帰るわね」
ティティベル神は、その場からすぐに逃げ出した。ここにいてはいけないことは、体がしっかりと警告していたからだ。ティティベル神のこの判断は英断だった。
後に、セルト神は二度とテルア・カイシ・クレストと関わろうとしなくなった。そして、その理由を訊ねた者は、もれなくセルト神に一番苦しむ呪いを掛けられるようになるのだった。
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