145話 神を鎮めるために 26
誰なんだろう?
眼前に現れた存在は、おそらく神の一柱なのだろう。
でも、纏う空気がヤバイ。だって、僕が真正面からやりあっても勝てないって感じるくらいなんだから。
その存在は、闇よりも尚どろどろしたものを抱え込んでるみたいだった。
白い髪は長く、首の後ろで結んでおり、肌も女性が羨むほどに白く、きめ細かい。女性的な顔立ちをしているが、喉仏はしっかりあるし、背も高い。
紺青の瞳が僕らを映すが、多分僕らのことなんて本当は歯牙にもかけていない。ただ、こうるさい、羽虫みたいに思ってるんじゃないかな。
僕は、こっそりとアイテム袋からある物を取り出していた。相手に気づかれないようにアイテムを使用する。
「たかが人間が邪魔するとは」
腕を伸ばされる。その腕から魔法が放たれる前に、僕は全力で近くにいたナーガを突き飛ばす。
突き飛ばした僕の腕に、何かが刺さった。いった!
刺さった何かは、抜こうとしても抜けない。おまけに、痛みはどんどん増してくる。
これ、呪いの類いだ。それも恐ろしく強力な。
「誰?」
解析を使う暇さえ与えてくれない。
「答える必要はないな。ここで死ぬお前に名乗っても仕方ないだろう?」
気づけば、その存在が僕のすぐ側に出現していた。
逃げたくても逃げられない。だって、僕の後ろには、みんなが・・・。
「ほう? 立派だな。この状況で、仲間の心配か。余裕だな。なら、これはどうだ?」
血のように紅い唇を歪ませて、その存在は僕の逆鱗に触れるような真似をしてくれた。みんなに向かって放たれる、黒い光線。
「やめろ!」
僕は思わず切りかかっていた。光線が、向きを変えて、全て僕に突き刺さる。
「くっ。うっ、がぁあああああ!?」
痛みがはね上がった。息をするだけでも、全身にくまなく痛みが広がり、発狂しそうだ。
「これで、終わりだ」
銀のきらめきが、僕の体に突き刺さろうとした時。
「よっと」
小柄な影が、男の前に降り立った。そのまま、回し蹴りを男の腹へとお見舞いする。男ががほごほと咳き込む。かなりのダメージだったようだ。
「まさか、こんなことになってたなんて。どういうつもり、堕ちた呪術神セルト?」
「ティティベル様?」
僕の前に立ったのは、ティティベル様だった。そして、もう一人。
「オイラの友人に手を出すとか。やめて欲しいんだけど、セルト?」
回し蹴りを放った小柄な影ーーー太陽神ロードが普段の明るい笑みとはまるで別種の笑みを浮かべていた。
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