140話 眠気覚まし?
午前の授業が終わって、僕はまた机に突っ伏した。
「ねむねむねむねむ・・・・・・ぐぅ」
ゴチン。
「いたっ!? な、何。昨日も今日も寝不足気味なのに・・・」
僕が殴られた頭をさすって起きると。何故か正也仁王が僕の近くで立っていた。
その顔は、僕に言いたいことが山盛りてんこ盛りある顔だね。うん、多分ゲーム絡み。今度は何だろう?
正也は、何も言わずに、そっと携帯端末を差し出してきた。
僕は見た瞬間、携帯画面をそっと消した。
いや、だって。
男の裸祭りが何故か開催されてる画像を見て、何を言えと?
一応、大事な部分はちゃんとモザイクがかかってる。
どうやら、クレストのおじさんが暴走したみたいだ。
クレストのおじさんと共に、僕の魔物軍団とネギボウさんが、写ってるけど、ほんとーに小さい。隅の隅の隅の方にこっそりと写ってるだけだ。
「警察署まで来てもらおうか」
「僕は無実です」
「いいから。話は署で聞く」
僕は正也に引きずられて、人通りのあまりない体育館裏にまで連れてかれた。
そこで、正也は思いきり息を吸い込み。僕は耳を塞いだ。
「なにやっとるんじゃぁあああ!」
はい、雷落とされました。
「いや、僕に言われても。そもそもの直接の原因は、クレストのおじさんじゃん。なんで、僕のせいにされるの?」
「その前後に、赤髪の少年が目撃されてたら、十中八九お前の仕業だろうが!」
「うわぁ、横暴。言っとくけど、赤髪の少年姿のプレイヤーなら僕の他にもいるはずだよ? なんで、僕だって決めつけるのさ。そもそも、赤髪だっていうなら、太陽神ロードもいるし」
「裸祭りが開催される前に武神クレストが、赤髪の少年と闘って、闘い終わると何故か脱衣ポーカーが始まり、負けがこんで最後には変な物を飲んで麻痺してそのまま、フェルマの街外れに放置したって話があるんだがな?」
「え、誰、それ言ったの。ちなみに僕は脱衣ポーカーには参加してないし、クレストのおじさんが負けたのはイカサマじゃなくてみんなではめた結果だし、僕が治療しようとしたら、ロードさんに変な場所に飛ばされて帰ってくるのが大変だったって続きがあるんだけど?」
「「・・・・・・・・・・・・。」」
先に目をそらしたのは、正也の方だった。
「あぁ、くそ。また巻き込まれパターンかよ。大変だったんだぞ、こっちは。武神クレストに服着てくれって言いに言ったら、あの悪夢の魔法少女の服出して着ようとするのを、紅蓮騎士団の有志で止めようとして、何故か乱闘になって、全裸の武神に笑いながら痛めつけられて、さらには追い剥ぎのごとく、装備を無理矢理全部外されたんだぞ? さすがに女性プレイヤーは、見逃してくれたが。最後はみんな半泣きとか、やけくそとかで、戦ってたんだからな。こっちが公然猥褻罪で捕まるかと思った」
「それは、お疲れさま」
ごめん、正也。そんな苦労してたんだね。そりゃ、怒るし、事情知ってそうな僕を掴まえて説教しに来るわ。
僕、その場にいなかったしねぇ。みんなはいたけど、止める気にならなかったんだろうね、きっと。
あれ、でもハイドがいたならいくらでも普通の服作れたはずだけど・・・。
「ねぇ、正也。ハイドは服、作ってくれなかったの?」
「ん?ハイド?」
「黒岩大蜘蛛のハイドだよ」
「あぁ。救世主のことか」
救世主!? え、なに、どういうこと!?
「あの救世主が、下着を人数分作ってくれなかったら、もっとカオスなことになってたのは間違いない。その場にいた全員が感謝してたぞ。蜘蛛を信仰する!って言って、職業変えたやつも出たくらいだ」
いい仕事したんだね、ハイド。今日ログインして会えたら、ほめたげようと。
そこで、予鈴が鳴った。早いね。
「まぁ、大丈夫だって。事故みたいなものだし。笑い話にしちゃえばいいんだって。正也は、精神鍛練の一環と思って、さ!」
僕がフォローすると、正也は不承不承頷いた。自分を納得させるのも大変だね。
「で、聞き忘れてたが。お前、今日は何も騒ぎ起こさねぇよな?」
「ん? ま、大丈夫だよ。囚われのナーガを助けに行くだけだから」
ずざっと、正也がとびのいた。
あれ、どうかした?
「正也、どうしたの?」
「いや、なんでもない。・・・・・・輝を本気で怒らせるとか、どんだけ命知らずだよ」
正也の後半の呟きは聞き取れなかったけど、ひとまず、僕らはバカなことを言い合いながら、教室に戻って午後の授業を受けたのだった。
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