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139話 神を鎮めるために 21

「メルセデス!」

 太陽神ロードに呼ばれた馬は、大きかった。馬とか見慣れてない僕でもわかる。この馬、普通の馬よりも絶対にでかいし、馬力もありそうだ。何より、その馬の一番の特徴としては。

「燃えてる」

 そう、その馬は炎を身に纏った馬だった。炎馬? っていうのかな。馬はちょっと守備範囲外だから、よくわからないけど。ただ、その。ものすごく荒ぶってるように僕には感じられるんだけど。気のせい?


「悪い、メルセデス! ちょっとオイラとこの子を乗せてってくれねぇ? 実は、ちょっと転移魔法に失敗して・・・・・・どわっ!?」

 メルセデスって馬は、ロードの頭にかぷっと噛みつくと、そのまま振り回し、ポーイっと言った感じで、ロードをほり投げた。空に向かって。

 キラーンって効果音をつけたくなるくらい、ロードは見事に夜空の星になってしまった。

 ・・・・・・は! 実況をのんきにやってる場合じゃなかった。ロードさんがいない場合、どうすればいいの、僕!?


「うちのロードが迷惑を掛けたな」

 心配無用だった。このメルセデスさん、普通にしゃべれるみたい。すごいね、それは!

「あいつにも、後でちゃんと人様を巻き込んでの悪戯はやめておけと説教しとく。まったく。俺の仕事を増やしやがって。そういや、少年はあいつの何なんだ?」 

「え? えーっと、称号では太陽神の友人とかなってますけど」

「すまん! どうせあいつがいっつも迷惑かけてるんだろ!? そうなんだろ!?」


 メルセデスさんは、僕に頭を下げてきた。あ、あの。そこまで信用ないの、太陽神って。


「とにかく、あいつはやることなすこと無茶苦茶なように見えて、あとから考えるときちんと目的あっての動きだったんだなとわかるのがタチ悪いんだよ。できる限り、関わらないようにするのが平穏無事に過ごせる一番の秘訣だ。俺も、仕事でなきゃ、あいつと一緒にいたくない」

 はぁ、と深くため息をつかれた。そのため息に、これまでの苦労が全て凝縮されてる気がする。


「まぁ、あいつのいいところは、挽回できない程に無茶をやるってことはしないところだな。それで、少年はどこに行きたいんだ? あいつがいないから、俺が送っていくことになりそうだが」

「えっと、ダークエルフの村に行きたいんだけど。ティティベル様を奉ってるみたいで・・・友人が、連れてかれちゃったんだ。それで、その友人を助けに行きたい」

「・・・・・・・・・。ティティベル神、か。あいつ、本当に狙ってやってるな、絶対」

「え?」

「いや、こっちの話だ。ひとまず、俺の背中に乗ってもらえるか? 村の場所はまぁ、大体わかるからな」

 その言葉に僕は素直に頷き、乗ろうと近寄ったんだけども。

 ・・・・・・熱い。

 メルセデスさんは炎を纏ってるから、近づくだけでものすごく熱いのだ。

「あ、すまん。このままじゃ乗れないな。火魔法のファイア・ガードは覚えてるか?」

「あ、はい。一応」

「それを使えば熱さは和らぐはずだ。そしたら、乗れるだろう」


 僕はすぐにファイア・ガードを唱えた。すると、確かになんとか触れるくらいまでにはなった。

 トン、と地を蹴る。メルセデスさんの背中に一息に乗る。

 足でしっかりとメルセデスさんの体を挟んで体を固定した。

手綱を握っておけ、という言葉に、素直に従う僕。

「それじゃ、行くぞ!」

 途端、景色がすごい早さで流れていく。いや、それだけじゃない。メルセデスさんは空を駆けてる。夜空の星がすごく近い。空気が澄んでて気持ちがいい。

 あぁ、すごい。あまりの雄大さに、呑み込まれてしまいそうだ。


「あ、そうだ!一つ言い忘れてたんだが!ブレーキを掛けるのが俺は得意じゃない!」

「え!?」

「だから、近くでうまく降ろすには、かなり早めの制止をかけなきゃいけない。けど、行きすぎちまうことの方が多いから、それでかなり時間が掛かると思って覚悟しろよ!」

 乗ってからそれを言わないでほしかったよ、メルセデスさん!

 こうして、僕は一晩とは言わないまでも、丑三つ時になるまで、ダークエルフの村の近くには行けなかったのだった。


次→21時

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