135話 ゲーム世界も結構シビア
すみません。最近、現実編を疎かにしてたものですから、書きたくなりました。(*^^*)
八時過ぎまではなんとかなった。でも、それ以降は僕の我慢ももたなかった。教室に行き、カバンをかけると机に突っ伏す。眠気はすぐにやって来て、僕は心地よい睡魔に身を委ねた。
ようやく起きたのは、ホームルームどころか、一時間目が終わった九時五十分だった。ヤバイ、テスト前なのに。でも、少し寝たお陰で頭ははっきりしてきていた。まだ、眠気が残ってるけど、二時間目は移動教室だから、外の手荒い場で顔を洗った。腫れぼったくなった目を水が冷やしてくれるのが気持ちいい。
目の中も洗うとしみたけど、これはまぁしかたない。
さて、移動しますか。
準備を整えた僕は、選択授業の美術へと向かったのだった。
絵を描くのは好きだ。上手じゃないけど、もふもふの可愛い写真を見ながら、頑張って描くのはとても楽しい。でも、これ、版画の原版の下書きなんだよね。三学期は、版画の出来で評価するみたいで、今から手を切らないか心配だ。板を掘るのって、難しいんだよね。
僕が描いてるのは、昨日の幻影魔法の光景だった。うさぎと猫の楽しい踊りの輪。うん、いい感じだ。
僕がスケッチブックを見ながら、満足そうに頷いてると。
「相変わらず、動物ばっかりね、赤石君は。しかも人間描くよりも上手いし」
「奥田さん?」
僕に話しかけてきたのは、出席番号の近い、奥田さんだった。眼鏡を掛けてる奥田さんは肩で切り揃えた髪を茶色に染めてる。僕の目から見て、特に可愛いとか思ったことはないんだけど、向こうから声を掛けてくれるので、話しやすいという感覚はあった。ニキビとか結構気にするみたいで、たまに手鏡を見て、むむぅと唇を尖らせながら、頬のニキビあとを触ってる。僕としては、あんまり気にならないけどね。
「あたしなんて、美術取るんじゃなかったー!って今も思ってるのに。その写真、何? 合成か何か?」
「あ、ううん。これ、ゲームの写真。ゲーム世界で撮ったスクショをコピーしたものなんだ」
「あ、ひょっとして! 一時間目寝てたのって、それが原因? 三田先生、角出して怒ってたよ」
「う。そういえば一時間目のノート取ってないや」
誰かに見せてもらわないとなー、と思った僕に、奥田さんは軽く言ってきた。
「じゃあ、これ終わったら赤石君にあたしのノート貸そうか? それなりに書き込みしてるから、授業聞いてなくても大丈夫だと思うよ」
「え、本当!? それは助かる!」
一時間目は歴史だったんだよね。奥田さんは、特に歴史科目は得意で以前見せてもらったノートも丁寧でわかりやすかった。貸してもらえるならありがたい。
「じゃあ、次の休み時間に貸したげる。放課後までには返してね」
「うん、ありがとう!」
「こら。雑談ばかりしてないで、ちゃんと描きなさい」
最後に先生に注意されちゃったけど。僕は満足だった。
これで正也に頼らなくて済むしね。
その後は先生に下絵を見せてOKをもらい、原版をもらって、カーボン紙で絵を映す作業を途中まで仕上げて、授業は終了になった。次には彫り進められそうだ。
「はい、それじゃ、ちゃんと返してね」
「ありがとう! 本当に助かるよ」
休み時間に早速ノートを貸してくれた奥田さんに感謝だね。
「ううん、別にいいって。あ、そうだ。さっきゲームしてるって言ってたけど、赤石君、何のゲームしてるの?」
「僕は『ファンタジーライフ』ってゲームしてるんだ。なかなか楽しいよ。時にぼこられるけど」
「あれ? 赤石君、ひょっとしてゲーム弱いの?」
「ううん。普通だと思うよ。でも、出てくる相手が強くて・・・昨日もなんとか死に戻りしないで闘うのが精一杯」
本当にね。急にクレストのおじさんがやる気満々でいたのを見た瞬間、死んだと思ったよ、僕は。ミルカスレーグイのおかげでなんとか死に戻りを回避したようなものだよ、あれは。
「ふーん。そうなんだ。でも、やり過ぎたら先生に怒られちゃうよ、気をつけてね」
それだけ言い残して、奥田さんは自分の席に戻っていった。
奥田さんのノートは丁寧だから写すのに少し時間がかかりそうだね。三時間目の古典は、先生にばれないように内職(ノート写し)しようっと。
詳しいことは、活動報告を参照してくださいm(_ _)m。次→6/22 8時




