123話 神を鎮めるために 9
「ふーむ。まさか、いきなり戦闘になるとは思わなかった」
「そうですね。私もビックリしました。こんなに強い魔物相手に、まったく怯まなかったチャップさんもすごいですが」
黒鋼蟻とチャップは実は同じ場所へと転送されていた。
「念のために、一応闇魔法で夜目はきくようにしていたから。しかし、ここから先には進めないみたいだな」
岩の人形が動いたときには焦ったが、チャップの闇魔法で弱体化、黒鋼蟻の地魔法で足止めを行いながら戦い、何とか勝利した、といったところだった。同属性なので、地魔法の効きは悪かったものの、速度は早くなかった。さらに、チャップは全属性魔法を習得したばかりだが、光魔法については念のためにLv5まで上げており、ヒールを使えることも大きかった。黒鋼蟻は、後方から渡されたアイテム袋の中のアイテムでチャップを支援した。なかなかにこの二体はいいコンビだった。
「扉と来れば、鍵で開くものなんですが。鍵っぽいものは落ちてませんね」
チャップは辺りを見回した。扉と同じ、岩がごろごろと落ちている。チャップは手頃な大きさの石を一つ手に取ると、いいことを思い付いた。
「そうだ! ここにこうしているのも暇だし、どうせならば、この岩を使って何かアイテムを作ってみるのも悪くないかもしれない!」
「え? アイテムですか?」
「まぁ、できるのは彫り物ぐらいだが。そうだな、一時間もかからないだろう」
「隣で見せてもらって構いませんか? 興味がありますから」
そうして、二人は扉の開閉について興味をなくし、彫り物に集中するチャップと、その隣で黒鋼蟻がチャップの彫り物を見学する。そうして、二人は退屈を凌いだのだった。
「皆を救ってくれたこと、感謝する、少年よ」
僕の前には古式ゆかしい衣装を着た、おじさんが立っていた。少し、姿が透けてるんだけどね。
「あなたは?」
明らかにイベントの気配だが、僕はセオリー通りに訊ねてみた。
「自己紹介が遅れたな。私はこの騎士団の団長、レグアという。我らを解放してもらった礼として、これを渡します」
テルアは聖域の門の鍵を手に入れた!
僕がもらったのは黒い木でできた鍵だった。どこかに門でもあるのかな?
「それは、聖域へと通じる門の鍵だ。扉をくぐるには、門番を倒なさけるばならない。門番を倒せ。さすれば聖域への道が開かれるだろう」
それだけ言い残すと、隊長さんも消えていった。とにかく、門とやらを探さなければならないらしい。方針を手に入れたのが何よりの収穫だ。
とりあえず門を探そうとしたら、騒がしい声が聞こえてきた。聞き覚えのある声だ。
「かぁ、かぁ、かぁ!」
「ぎぃぃ!」
「あーもう、こっちで本当に合ってるのだな?睨み合ってないできちんと答えてほしいのだ!」
「ネギボウさんに、小鬼に、ヤマト?」
僕の前方から、その三人(?)が姿を現した。ネギボウさんは嬉し涙を浮かべている。
何があったかは聞かないけど、大体の予想はついた。
「かぁ!」
「ギィ!」
二体が鋭い声を発した。遅ればせながら僕も気づく。魔物の気配だ。
ゴゴゴゴ、とせり上がる、岩でできた門。その両隣には、岩でできたゴーレムがいた。




