11話 逃走
「うわぁぁああああ!」
悲鳴を上げながら、僕は逃げてた。
後ろから、地響きと共に追ってくるのは、見るのも嫌になるほどの大きな黒蛇。
右肩には吸血蝙蝠、左肩には三つ目蛞蝓を乗せてる。いくら、蛞蝓でも、あの蛇相手じゃ、竦み上がることはないと言い切れるよ、僕は! シヴァは敏捷が低いし、ブラッドなんて僕の肩で寝てるよ!
息切れしないのが唯一の救いだ。
ログみる余裕もないよ!
バキバキバキグシャァッ。
後ろ振り向きたくない! 思いきり餌認定されてる気がする!
でも、このまま走っていても逃げ切れない。
僕は考える。確か、蛇は熱の感知機関(ピットだっけ?)を持ってて、獲物を察知するんだっけ? うろ覚えだけど!
それなら!
「ファイヤーストーム!」
僕は、逃げる方向とは別の方向へ火魔法を放った。
木に燃え移った炎が、勢いよく燃え上がる。
森林火事を気にしてる余裕ない! 命の方が大事!
ピクリ。
黒蛇は大きな炎の熱量を探知して、そちらに方向転換する。
黒蛇が別方向へ行くのを見て、僕は、ようやく息をつけた。
あぁ、なんか、妙に焦って疲れたよ。
ちょっと休憩する・・・暇さえもらえなかった。
僕は、冷や汗を吹き出す。
何これ!? 周囲に気配がたくさんあるんだけど! おまけに、さっきから危機察知のスキルの影響なのか、ヤバイって感覚が全身に駆け巡る。
僕らの周囲は、特に何の変鉄もないように見える。けど。
ーーー耳を塞いで。
僕はさっと耳を塞いだ。
僕の右肩から、寝ていたはずのブラッドがばさりと飛び立つと、超音波を発した。
耳には聞こえないが、ビリビリと体を衝撃が駆け抜けていく。
ざわざわと木々がざわめき・・・いや、違う!
ただの木々だと思っていたが、それらは魔物だった。
「トレント系の魔物か!」
十、いや、二十体くらいいる。
これは、覚悟を決めるしかない。
怯ませても、これだけの数では逃げ切れない。
ならば、倒しきるしかない。
二十体もいなきゃ、こんな無謀なことしないのに。
僕は、短剣を抜き放った。
どいつを倒せば効率がいいかを素早く計算し、僕は肩に乗っていたシヴァをトレントがおらず、後ろからも攻撃しにくい木の下に下ろす。
ブラッドも僕の肩には戻らずに、シヴァの隣に降りた。
僕は、シヴァとブラッドの前に立つ。
この二体じゃ、トレントの一撃を食らうだけで動けなくなるだろう。
だから、シヴァとブラッドを守りながら戦わなきゃならない。
どこまでもこちらが不利だ。でも、あきらめる気になれない。
あきらめたら、そこで終わりだから。
死に戻りはしたくない。
ーーー戦闘が始まった。
次→19時。
 




