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105話 フェイマの街 14

 さて、とりあえず僕としてはあんまりよくわからない状態に巻き込まれたするのはいつものことであり(←まったく自慢にならない)、厄介事のとばっちりが来ることもある程度耐性がついており(←気づけば身につけてた耐性。やはり自慢にならない)。そして、僕自身は適当にしていても、周囲が激怒するという結果はお馴染みのパターン。


「テルア! 姉貴が本当にすまん! 後で絶対に言い聞かせる! だから、これ以上は勘弁してやってくれ!」

「えーっと、こっちこそ、なんかごめん。ミルカスレーグイたちがここまで怒り狂うとは僕も予想外だったから」


 そう、僕のことが気に入らなかったのか、側近としての心構えもなってない軟弱者がぁ!といって攻撃しようとしたマスターのお姉さんは、今、冒険者ギルドの床にうつ伏せになってた。

 その上には、ミルカスレーグイたちを始め、自分の重さを自由に変えられる仮面を被った精霊たち。僕が契約した精霊たちが、勝手に召喚され、お姉さんの動きを完全に封じていた。さらに、頭の上に乗ったヤタガラスの雛が、こつこつこつこつ、お姉さんの頭を嘴で小突いてる。あれは痛そうだ。って言うか、血が出てきてるし。


「なんで、こんなにも、精霊が・・・ぐっ、動けない」


 お姉さんが呻きながらじたばたとするが、精霊たちの拘束はほとんど緩まない。なにせ、三十体ほどいるのだ。交代しながら、お姉さんを拘束している。おまけにミルカスレーグイの超越者の運が発動中で、お姉さんは現在、わけのわからない金縛りまである始末。それでも動こうとするお姉さんの根性がある意味すごい。


「マスター、身内で苦労してるんだね。大変そう」

「しばらくはこの街で身を潜めてたんだけどな。ちょっと借金して、そんで賭博場で働いてたんだよ。身を隠すのにも都合が良かったし。賭博場から出たから嗅ぎ付けられたらしい。相変わらず人の匂い追うことにかけちゃ一流だな。俺は、家に戻らないって何度も言ってんのに」

 はぁ、と嘆息するマスターに、同情し、腕をポンポンと叩くと。

「ああ!? 最近は私に触らせてもくれないのに!」

 必死に顔を上げているマスターのお姉さん、秀麗な顔に血がたらたらと流れてるため、ちょっと怖い。

 だけど、もっと怖いことが起きた。


「へぇ? あんた、テルアに喧嘩売ったんだって?」

「ナーガ?」

 いつのまにか冒険者ギルドにやって来ていたナーガは、微笑んでいた。微笑みながら、既に弓に矢をつがえて、いつでもマスターのお姉さんに放てるようにしていて。って、ちょっと待ったぁあああ!

 慌てて僕はナーガを押さえに行くのだった。



 ナーガに簡単な事情説明をすると、ナーガはぎろりとマスターを睨んだ。


「あんたな。身内のことくらいきちんと見張っとけよ! それにだな、もう一つ言っとくことがある。こっちの方が問題として深刻だ。どうしてテルアに符術なんて教えやがったんだ! わかってんのか!? ただでさえ、こいつ一人で街ぐらいなら攻め滅ぼせる戦闘力あるんだぞ!? 剣技も玄人裸足、魔法も全属性使用可能の、とんでもないやつなんだぞ!? それに精霊の力も借りれるとか、もはや歩く戦闘兵器、いく先々で被害をもたらす大災害に等しいじゃねぇか!」

 ・・・ナーガ、そこまで言う? さすがに僕も自分のスキル数多いなーとかは思うけどさ! 色んなイベント起こるのは、別に僕のせいじゃないし、条件満たしたプレイヤーなら、誰でも起きるじゃん!


「ナーガ、さすがにそれは僕に失礼・・・」

「お前らは何もわかっちゃいない! あの堕ちた月神ティティベル様なんて、こいつにひどい目に遭わせられて、絶対にこいつには近寄らない!って泣いて言ったんだぞ!? そんな非常識な真似が平気でできるこいつに新しい力なんて、被害拡大を促す暴挙・・・」

 僕はそっとミルカスレーグイや他の精霊たちに目配せした。

 ナーガ、やっちゃって。

 僕の目配せの意味を正確に受け取った精霊たち。

 かくして、今度はナーガが床に突っ伏すことになったのだった。



「すいません。調子に乗りました。反省してます」

「本当に。反省してよ?」

「反省してる。反省してるから、頼むから威圧使うのやめてくれ。本当に、結構きつい」

 僕が覇王の威圧を解くと、ナーガはほっと息を吐き出す。そんなにきついとは思わなかったんだけど。

「自覚ないようだから言っとくけど。普通にあんなの食らうときついから。ほら、そっちの女もすごくおとなしくなった」

 ナーガが、突っかかってきていたお姉さんを親指で指すと、びっくぅと震えられた。精霊はもういないので、自由の身だけど、どうやらおとなしくなってくれたみたいで、良かった、良かった。


「そういえば、お姉さんの名前聞いてないなぁ。よく考えると、マスターの名前も」

「ん、ああ。俺の名前はグース。姉はファミリアだ」

 よし、じゃあ、今後ファミリアさんとグースと呼ぶことにしよう。

「ま、改めてよろしく、グース。ファミリアさん」

 

 グースが仲間になった! グースにファミリアがくっついてくるようになった!


 あれ? ログ流れたんだけど。これ、正式にグースが仲間になったってこと?


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