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103話 フェイマの街 12

「さて、どんな文章にしたもんか」

 マスターは考える。この手紙は、ようやく巡ってきた千載一遇のチャンスだ。

 このチャンスをものにできなければ、おそらく今後二度と自由にはなれない。

 大きな賭けだったが、やるしかない。

 息を吸い込み、マスターことグースは、真剣に文面を悩み始めた。

 

 レーラは、悟っていた。これは千載一遇のチャンスだと。この手紙で上手くピッケを挑発すれば、父親を解放してもらい、さらにウサギのぬいぐるみも渡さなくてすむかもしれない。

 そう考えると、俄然やる気が出てくる。だが、問題は文章にする時点で、隣のマスターが邪魔してこないかだ。

 つっこまれにくい文章を頑張ってつくるしかない。


「何がどうしてこうなった」

 できあがった文章は、カオスなことになっていた。



 はじめまして。これを読んでるあんた、そう、あんただよ、ピッケ。俺はあんたからマスターを奪った。その事を反省も後悔もしていない。だが、あんたは俺に言いたいことが豊富だろう。だから、話をしようじゃないか。

(←以上までマスター作)


 ○月○日に、○時に、あなたとの会談を望みます。内容は、自分たちが行動を共にしているレーラたちのことについてです。はっきり言います。俺はレーラを愛しています。なので、レーラが嫌がることを黙認するわけにはいきません。そのため、レーラの父親、ぬいぐるみの件についてとことん話し合う気です。

 その覚悟で来てください。

 

 ーーーーーーテルアより(←レーラ作)


「完全なる嘘っぱちじゃん、これ!? なんか、テルアが二人とできてるみたいなことにもなってるし! こんなの送ったら、俺がテルアに怒られるって! いいか、手紙ってのは・・・」


 ナーガが手紙について語っている間、グースが自分の符術でこっそりと精霊を召喚し、ピッケに手紙を届けさせた。

 結果。



「なに、この文章。相手ってバカ? いえ、バカよね? こんな破綻した文章の手紙なんて送らないわよ、普通。しかも何、片方はいい年の娘さんで、もう片方はいい年の青年? 待ちなさい、どんだけ守備範囲が広いのよ、テルアってやつは」

「さぁ」

 部下の一人が困惑しまくった顔で、明言を避ける。

「この様子じゃ、どうも交渉で二人を手放してはくれなさそうね。しかも、これ、話し合いなんてする気ないぜ! って言ってるようなものじゃない? 喧嘩売ってんのかしら」

「うーむ。いつの間にテルアは恋人なんぞつくったんじゃ。儂、何にも聞いてないんじゃが」

 空間転移で移動し、ちゃっかりピッケに届いた手紙を盗み見するジャスティス。さすがにピッケが注意する。


「ジャスティス様。当方宛に届いた手紙を勝手に見られては困ります」

「おお、すまん。しかし、この文章、ひょっとして、テルアはもう、結婚を考えとるのか!? い、いかん、いかんぞ! テルアはまだ子どもじゃ。結婚なんて早すぎる!」

 動揺するジャスティスは、斜め上な誤解をしていく。


「あ、あの?」

「テルアの恋路を邪魔したくはないが、これも祖父としての勤めじゃ! 心を鬼にして、鬼舅になりきるわい!」

 恋路の邪魔どころか、むしろこの手紙を見た瞬間、テルアが怒ることを全然想定してないじいちゃん。そして、じいちゃんの暴走は続く。


 事態は、テルアが思うよりもとんでもない誤解を含めて、動き出すのだった。


次→19時

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