表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/424

102話 フェイマの街 11

 テルアを探し初めてから十数分後。

 ナーガはあっさりとテルアを見つけることができた。何故なら、ものすごい人だかりができていたからだ。

 ナーガが不思議に思って人だかりをかき分けて行ってみると。

 そこには、ずらっと並ぶ仮面を被った奇妙な存在の大群が、列をなしていた。


「押さないでくださーい。テルアと契約したい精霊さんは並んでくださーい」

「うわ、すげぇな」

 思わずそんなことを言い放ってしまうほど、精霊たちの列はすごい。そして、その中心にいるテルアは契約しまくっていた。

「次の精霊さん!」

 テルアは、どんどんと契約していく。アイテムボックスには、契約した精霊との札でいっぱいになりつつあった。

「テルア〜。なんか、えらいことになってんな。これ、どしたんだ?」

「ナーガ!?」

 テルアは顔を上げてナーガを視認するが、とにかく契約のために並んでいる精霊の数が多い。そのため、ゆっくりとしゃべる暇もなさそうだった。

 ひとまず落ち着くまではと、ナーガはおとなしく待つ。


 一時間後。

「お疲れ〜」

「うぅ。待たせてごめん、ナーガ。精霊たちが、とにかく寄って来まくって」

「それなんだけどな、テルア。なんでテルアが精霊と契約できるようになってんの?」

「成り行き?」

 本当に成り行き任せで使えるようになったテルアだったので、こう答えると。ナーガは一瞬にっこりと笑ってから。

「お前、ふざけんな! こっちが毎回毎回、どんだけ苦労しながらお前のこと見張ってると思ってやがる! ちょっと目を離した隙にこれかぁ!」

 テルアの頬をつかんで、両側にびろーんと伸ばすナーガだった。



「ふぁーら、ふぁにふるの(ナーガ、何すんの)!」

 僕の抗議はナーガが頬を両側に伸ばしてるため、抗議にならない。

「ふぁなして(離して)!」

 僕は、ナーガの手首を掴むと、強引に頬から手を引きはがした。

「で、まぁ、今さらだが。なんでまた、精霊が列を成すようなおかしなことになったんだ?」

 ナーガの質問に僕は背中を見せた。

 ずざっと後退するナーガ。

「クケケケケケケケケ!」

「カァ、カァ」

 僕の背中にはおかしな仮面の精霊、ミルカスレーグイとヤタガラスが張りついている。それを見て、ナーガは思わず引いてしまったのだ。気持ちはものすごくよくわかるけど、ちょっとショックを受けたのは内緒だ。

「ミルカスレーグイと契約した途端、急に精霊たちが集まってきて・・・それで、契約してたんだよ。何かの役に立つかと思って」

 僕の言葉に呼応するように、ポン、と姿を現す精霊たち。

 うん、またもや勝手に召喚された。

 この変な機能、なんとかならないの!? と叫んだら、マスターがさりげなく街中以外では勝手に召喚はされないことを教えてくれた。召喚頻度は、親密度によるらしい。

 一番親密度が高いのがミルカスレーグイ。そして、ミルカスレーグイが僕の背中に亀のように張りついてるからか、様々な精霊が僕によって来て、契約したがったのだ。なんでも、ミルカスレーグイは真実の目を持ってるんで、人の性格がある程度わかるらしい。

 そんなミルカスレーグイが契約を結んだ僕は、精霊にとっての好物件としてあっという間に口コミで広まったそうだ。

 おかげで符術のスキルレベルがどんどん上がっていった。


 でも、ミルカスレーグイの超越者の幸運はそれだけに留まらなかった。

 いく先々で親切にしてもらい、気づけば様々なアイテムを入手していた。本などは、あとでシヴァやチャップにでも渡そうと思う。


 閑話休題。


 そして、大体僕の方が話し終えると、ナーガの方が今度は別れた後で何が起きたか話し始めた。僕を探す途中、太陽神ロードにあったこと、ロードに誘われるまま賭博場に行ったこと、賭博場でピッケと名乗った男と知り合ったこと、その後、紆余曲折を経て模擬戦を行ったこと。そっちもやりたい放題やってるじゃん!という僕のつっこみは、流されてしまう。


「まぁ、俺は模擬戦には参加しなかったけどな。あのピッケって男怪しすぎる」

「ピッケかぁ。確か、僕も聞いたな、その名前」

「ピッケはこの街の裏の顔だ。迂闊に手を出せるような相手じゃない。真正面からやっても勝ち目はないと思うが?」

 うーん、確かに。でも、本人に会う必要ありそうだしなぁ。

 どうしようと考えていると、そろそろ僕の方の時間がヤバイ。そろそろログアウトしないと夕飯を食べそびれてしまう。

 あ、そうだ。

「そのピッケって人に手紙出して、会う日時と場所、こっちで指定しちゃおうよ。じいちゃんたちとの模擬戦でこっちが油断できないってわかってるなら、案外のってくるかも」

「それはいい考えだな。よし、なら文面は俺が考えてピッケに送ってやるよ」

 マスターが挙手し、自信満々に請け負った。

「そう? それなら、マスター頼める? マスターが書いた手紙をナーガに届けてもらおう」

 話は決まり、僕はログアウトした。

 この時、この三人に手紙を任せることがどれだけ危険か、僕はちっともわかっていなかったのだった。


次→6/4 8時

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ